女性のためだけではない

【白河】先日、台湾のIT担当大臣のオードリー・タンさんの本を書いた近藤弥生子さんに、台湾のダイバーシティ&インクルージョンはどうやってできたのかと質問したんです。すると、それは学校の校長先生、政治家の海外使節団、政策に関わる委員会など、「公」に関わるあらゆる分野の男女比をウェブサイトで公開するようにしたことが理由だと言うんです。そうすれば、政治家や官僚が何かする場合、必ず男女比を気にするようになるんですって。

私は、どうやったらこういうことが日本でもできるのか、いろいろな人に相談してまわっているところです。やっぱり「見える化」していかないといけない。

【笛美】安易に女性の数を増やしたくないという人もいるので、まず見える化して、なぜ女性を増やすことが必要なのかを説明しなくてはいけないでしょうね。

【白河】何かを変えるためには、やはり数が必要です。ですから日本オリンピック委員会の理事の女性比率は、4割を死守してほしいですね。女性が4割いると「女性代表」ではなくなるんです。4割の中に、いろいろな意見が出てきます。そうすると、その場全体が活性化して、これまでわきまえていた男性からもいろんな意見が出てくるようになる。ですから女性を増やすことは、女性のためというよりは、みんなにとってよりよく物事を決めるためなんです。

【笛美】今、白河さんが言ってくださったことは、まだちゃんと理解していない人がいる気がするので、この機会にもっと広まるといいですね。

頑張りすぎないで、『逃げ恥』でいこう

【白河】女性活躍の話をするのは、私も苦しいんですよね。これ以上女性に「頑張れ」と言うことになるので。

【笛美】今生きている女性は、みんな本当に偉いと思います。本当によくやっている。会社の中でも、こんなにつらいのに一生懸命ニコニコ頑張ってくれていて、本当にありがとうといつも思います。

【白河】そうですよね。でも、あまりに頑張りすぎると、つらくて壊れてしまう。そこまでしなくてもいいからと思います。そこはドラマの名言が。『逃げるは恥だが役に立つ』。今は女性人材が求められているので、本当にこれはもうダメだと思ったら、どんどん転職してもいい。ひどい会社はもう見捨てて、「いずれ滅びるから」ぐらいに思っていただきたいですね。

【笛美】「いずれ滅びるから、もう見捨てよう」って思えるまでに、時間がかかるんです。そこにいると、「この環境が自分のすべてだから、もっと頑張らないと」と思ってしまう。この組織が滅びるなんて想像もできない。でも客観的に見たら、白河さんがおっしゃる通りなんですよね。

構成=池田 純子

白河 桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学大学院特任教授、女性活躍ジャーナリスト

1961年生まれ。「働き方改革実現会議」など政府の政策策定に参画。婚活、妊活の提唱者。著書に『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP研究所)など多数。

笛美(ふえみ)

2020年5月8日にTwitterに投稿した「#検察庁法改正案に抗議します」を作った張本人。ハッシュタグは瞬く間に広がって、400万を超すツイートを生み出し、Twitterトレンド大賞2020の2位に。現在も広告関連の仕事をしている。