自由へのアプローチが異なるアメリカの保革

アメリカは、共和党と民主党による二大政党制の国です。二大政党といえば多くの国では「保守vs.革新」、つまり資本主義系vs.社会主義系の構図になりがちですが、アメリカの場合は「保守vs.リベラル」と呼ばれます。これは保革の対立関係に、とても似ていますが少し違いがあります。

アメリカは「自由の国」ですから、どちらも自由をめざす点では同じなのですが、実はそのためのアプローチが全然違うのです。

共和党は「自由を求める保守層」です。彼らは「自由の国では、がんばれば誰もがアメリカンドリームをつかめる」という伝統的価値観を信じ、とにかくフェアな自由競争を好みます。そのため彼らは、社会保障などの政府の介入を「自助努力以外のアンフェアな要素」として嫌います。なぜなら弱者は「フェアな自由競争に敗れた結果」であり、それを救うのは、かえってアンフェアだからです。

特に高額納税している富裕層は弱者救済には冷淡で、彼らのスタンスは、トランプの娘婿・クシュナー氏の言葉に集約されます。「頑張らない人のために、僕らは頑張れない」。

これに対して民主党は「自由を求める革新層」です。彼らは、誰もが自由の国でアメリカンドリームをめざすには、まず「万人に平等な機会」を与えなければいけないと考えます。そのために彼らは、貧者もマイノリティも同じスタートラインに立てる環境整備を重視し、福祉や教育、不況対策などに積極的に介入します。

経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスは「アメリカではリベラルという言葉が、本来と逆の意味で使われている」と言いましたが、私はそんなことはないと思います。確かに行っている政策は「不平等の是正」、つまり社会主義的ですが、それが自由のための環境整備と考えれば、彼らをリベラル(自由主義者)と呼ぶことに矛盾はないと思います。