90日DX計画戦略マップ:問屋の事例

《テーマ》営業利益率を高めていくために、何をDXし、どんな単位でデータを見ていくと良いのか?

問題の正しい分解と設定が、別の解決策を導く

中堅問屋の事例です。中期的なゴールには営業利益率の改善を掲げ、現状の1~2%から5%へのアップを目指しています。事業構造はオーソドックスな問屋といえますが、数多くのメーカーから仕入れた商品を取引先の企業や店舗に販売する形に描きました。

90日マイルストンは、かねてから同社の課題であった「単品管理システムの設計(要件定義)を終える」ことを想定していました。問屋としての強いアセットは持ちながらも、DXについては手を打ちあぐねて、後手に回ってしまっているのも悩みでした。

ルーティンの業務をP/Lで分析する

この問屋は、扱っているメーカーだけでも1,000社あまり、商品数は数万にも及び、納品先も数千店舗近くあります。

同社はかねてから「商材ごとの単品管理ができていないこと」を課題に感じていました。なぜ、彼らが単品管理を求めるかというと、赤字を出している商材を特定するマネジメントができていなかったからです。

そのため、90日マイルストンでも「単品管理システムの設計」を想定し、現在足りないアセットにシステム部門とITベンダーのリソースをあげるほか、「古い業界慣習」をプロブレムに書き入れていました。

私たちはこの戦略マップを見たときに、そもそも「なぜ単品管理したいのか」を深掘りして聞いてみたのです。すると、「赤字の商品を打ち切り、仕入れ条件を交渉したい」という意図があるとのこと。確かに気持ちはわかります。これだけの商品数を扱っていると、細かな収支は不透明になりがちです。

ある店舗では黒字であっても、別の店舗では赤字というケースもあるでしょうし、問屋である以上は注文に応えて仕入れて配送しなければなりません。「単品管理ができれば、営業利益率を改善するためのオペレーションを回せるのか」を、システム部門ではなく営業部門に改めて問うと、実は確証がないことが明らかになってきました。

『90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版)より
90日で成果をだすDX入門』(日本経済新聞出版)より