販売チャネルをどう転換するか

これまでのネスレ日本のビジネスは、基本的にBtoBtoCが主軸でした。卸店や小売店を通した販売が中心で、テレビCMなどを通じてブランドイメージの向上に努めるという図式です。現在では、自社でECサイトを設け、1杯取りコーヒーマシンを活用した製品の販売を、消費者と直接つながる形で行っています。

コーヒーのような嗜好品は、もともと「買う人」と「使う人」が異なるケースが多い商材です。たとえば、家庭であれば商品の選択権は買い物をする主婦や親などにあり、パートナーや子どもはそれを使うだけです。会社の休憩室に置くのであれば、総務部などの担当者が買い出しに出て、置かれているものを社員は利用するでしょう。

ところが、サブスクリプションへ移行しようとするなら、「買う人=購買者」の先にいる「使う人=消費者」のことを理解しなければなりません。

白いカップでコーヒーをいれる
写真=iStock.com/radbut
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キャッシュレス化で飲用データ取得が可能に

その理解をさらに深めていくためのDXとして、2019年10月に投入された新しいマシン「バリスタ デュオ プラス」は好例です。オフィスを中心に、カートリッジのコーヒーを定期的に購入することでマシンを無料で使用できる「ネスカフェ アンバサダー」のサービスで利用できる最新機種です。

「ネスカフェ アンバサダー」でコーヒーマシンをレンタル利用していただく場合、これまでの機種では利用料金の支払いや回収を現金で行っていましたが、「バリスタ デュオ プラス」では、キャッシュレス決済の対応が可能になったことがユニークな特徴です。

ブラックコーヒーやカフェラテなど、カフェで提供されるような本格的なメニューが楽しめるのはもちろんのこと、「バリスタ デュオ プラス」が優れたところは、決済情報を含めて「誰が、いつ、何を」飲んでいるかなどの飲用データを取得できることです。それにより、消費者の理解をより深めることができ、新たなビジネス展開のために役立てることができます。

「バリスタ デュオ プラス」を使った取り組みは、ネスレ日本が最終的に目指すサブスクリプションへのビジネスモデル強化に向けて行った具体例のひとつといえます。

単価アップおよび、長期にわたる変革に向けたコンフリクトの乗り越え方、いかに模倣されない形でテクノロジーを活用するかなど、多くのヒントがインタビューからみえてきます。