1度目の緊急事態宣言時は準備なしのテレワークだった

テレワークを実施するには、セキュリティが担保されたパソコンと専用のネットワークと社内システムへのアクセスなどの通信環境が不可欠だ。加えて労働時間の把握など労務管理上の規則を定めたテレワーク規定の整備と周知が必要だ。さらに継続的に実施するには書類のやりとりの電子化やペーパーレス化も必要になる。

それが何もないままにスタートした企業も多かった。実際に日本テレワーク協会にはそれに関する問い合わせが相次いだという。同協会の担当者は「在宅中の始業と終業の時間は何時に設定すればよいのか、連絡はメールでもよいのかという初歩的な質問から、どうやって労働時間を管理するのか、テレワークに合わせて就業規則を変えないといけないのかという相談もあった。また、通信費や光熱費は会社が負担しないといけないのかという執務環境に対する質問や社員の自宅のパソコンを使用してもよいのかという情報通信システムの相談もあった。突然の在宅勤務への移行で何も準備ができていない中小企業は相当とまどっていた」と語る。

手元にマグカップを置き、ノートパソコンで自宅からリモート作業
写真=iStock.com/Maryna Andriichenko
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中小企業勤務者の6割が「テレワーク環境が改善していない」

では緊急事態宣言以降、テレワークをするための環境整備は進んでいるのか。前出の内閣府の調査(12月24日)ではテレワーク経験者に「職場の改善」の程度を聞いている。「大幅に改善した」が21.5%、「やや改善した」が42.5%の計64%。一方「あまり改善していない」「全く改善していない」の合計は29.1%と、3割の経験者が改善されていないと答えている。企業規模に格差もあり、従業員1000人以上では74.1%が改善したと答えているが、30~299人では59.8%となっている。テレワーク経験者ですらも環境整備が進んでいない実態もある。

また、テレワークを認めている企業でも一部に限定され、ほとんど進んでいないところもある。飲食チェーンの人事担当者はこう語る。

「管理部門など間接部門はテレワークを認めているが、店舗の従業員は当然出社している。どこか後ろめたい思いでテレワークをしている社員もいる。本当はテレワークをしたいが、テレワークができない現場の社員のことを考えて言い出せない社員も多く、結果的に管理部門も出社しているのが実状だ」