日本は採卵数が少ない自然周期治療が主流

日本では「自然周期」での治療が多いことも、採卵数に対する生児獲得率が極端に低くなる理由のひとつだと言います。

カウンセリング
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです

「体外受精の治療法は、大きくわけて2つ。自然に排卵される卵子を採卵する自然周期と、排卵誘発剤を使って複数の卵子を育てる刺激周期です。一度に複数の卵を採卵するほうが移植まで到達できる受精卵を得やすく、その分、妊娠率も高くなります。海外では、高刺激での治療が主流です。ただ、日本では体に負担が少ない自然に近い治療を希望する人が多い。自然周期では、採卵できる個数は通常1個です。卵子1個あたりの受精率は7~8割ほど。着床率まで考えると、さらにそのパーセンテージは下がります」

自然周期での体外受精では、移植できる受精卵を得られないために何度も採卵を繰り返す、というケースも少なくないそう。

「ただ採卵個数が多くなるからといって、一律に強い刺激を推奨することはできません。卵巣機能が低下してくると、排卵誘発剤で刺激しても思うように卵が成長しないこともあります。高齢での体外受精では、自然周期でなければ治療ができない人も多いのです。また、日本人は体格が小さいために薬の反応が出やすい、と考えられています。あまりに強い刺激を与えると卵巣過剰刺激症候群などの副反応が出てしまう恐れもあるのです。刺激周期を選択する場合も、海外で行われているよりも弱い刺激で行うことが多いですね」

高齢での不妊治療が多い

「日本の高度生殖医療の技術レベルは、諸外国と比べても高いと言われています。ただ、その医療技術を持ってしても、年齢にあらがうことは難しい。日本の体外受精の成功率が低い最大の理由は、高齢になってからの不妊治療が多いことだと考えられます」

2018年のデータを見ると、全年齢のうち、採卵数が最も多かったのが40歳。40歳以上の不妊治療患者の割合が世界で最も高いのが、日本です。

「35歳以降、妊娠率は急速に下降していきます。それは体外受精を行っても変わりません。40歳での着床率は、10%前後です。一方、アメリカやイギリス、フランスでは、体外受精の治療を受ける患者のボリュームゾーンは35歳未満。フランスでは、不妊治療に一部保険を使うことができ、結婚前や事実婚のカップルにも適用されます。妊娠は妊娠適齢期に、という啓蒙はもちろん、それを推進するための社会的な仕組みも整えられているようですね。日本でも卵子の老化については広く知られるようになりましたが、まだまだ治療のスタートは遅い。妊娠は結婚してから、という考えも根強くありますし、働く女性の職場環境にもまだ課題が多いと思います。治療の年齢を引き下げていくためには、社会的サポートも必要です」