過去のデマやパニックも初めての出来事の繰り返し

繰り返すようですが、想定外のことは人生で時々起こります。今回のコロナ禍のように日常や社会が急激に変わっていくと寂しい部分もありますが、例えばリモートワークの推進や、通勤時のラッシュアワー回避など、良かったと思える部分も同時に引き起こされます。失うものもあれば得るものもあるのです。孤独に関しても、周りの空気ばかりを読まずにすむといった良い面もあるのですから、何を取って何を捨てるのかということを一人一人が考える、またとない機会になるのではないでしょうか。

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そうは言っても、われわれにとってこれほどの感染症は初めての経験です。社会心理学者が言うように、これまでに起こったデマやパニックと新型コロナは学術的には同じ構図なのかもしれませんが、オイルショックでの買い占めも、信金の取り付け騒ぎも、明らかに新型コロナとは違うと思ってしまいます。客観視して同じ構図に見えるほどわれわれは賢くないのです。だから同じようなデマの拡散が横行してしまう。そういう意味では人は学ばないし、いつまでもアマチュアのままでパニックにもなるのです。

今、私たちに必要なのはマインドフルネスという感覚

現代の日本は、ミクロな世界に入り込んで周りが見えなくなっている印象があります。元来、日本人の行動は宗教的で、お天道てんと様やご先祖様、人の目を気にする民族でした。ところがSNSの発達で、実在の間柄であれば働くはずの自制が利かなくなり、さらに見ず知らずの人が過激な発言をあおるようにもなったのです。

今は「自分を制する」ことが必要なときです。この瞬間の体験に意識を向ける「マインドフルネス」の感覚を持つことが大切だといえます。メディテーション(瞑想めいそう)やヨガをする、美しい景色を見る、神社でお参りするなどリラックスできる方法を探して、まずは自分の心の内を整理していくことから始めてみてください。

また、人生のゆらぎのときこそ発見が多いときでもあります。人生を再発見してもう一度再構築していけるかどうか、それには楽観的な視点を持っている人のほうが強いのは明らかです。たとえ根拠はなくても、それでも人生うまくいくと泰然と構えていられるか、終わらない不幸はないと考えられるかが問われています。

普段から不変的な、底力のようなものを身につけておくこと。そして、悩んでいるのがばからしくなる、くだらなく感じてくる、そう思えるような自分を超えた大きなもの、心のよりどころとなるものを見つけることが大切です。雄大な富士山を眺めて心を和ませる、そんな安らぎが今必要なのです。

構成=横山 久美子

上田 紀行(うえだ・のりゆき)
東京工業大学教授、リベラルアーツ研究教育院長

1986年よりスリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークを行った後「癒やし」の観点を早くから提示し、生きる意味を見失った現代社会への提言を続けている。代表作に『生きる意味』(岩波新書)、近著に『愛する意味』(光文社新書)など。