デマ、差別、買い占め、誹謗ひぼう中傷、自粛警察……。先行き不透明な状況下で、私たちの心の持ちようもさまざまに変化している。こんなとき、ひとりの人間としてどう振る舞うべきかを聞いた。

孤独と無力感が最大のストレス要因に

テレビをつければ朝・昼・晩と新型コロナウイルス感染症関連のニュースが流れ、インターネットでも常に情報にさらされているような状態が続く。まるでデイトレーダーのように、これだけ毎日みんなが数字に一喜一憂する状況は珍しく、それが生命に直結する数字であればなおのこと、疲れている人が多くなるのも無理はありません。

Covid19小説コロナウイルスの噂。抽象的な幾何学的背景に不吉な手コントロール木製の人形。
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今は主体的にコントロールできない無力感を日々味わわされ、生きている実感や仲間とのつながり、世界との一体感といったものを感じる「晴(ハレ)」の部分が失われた状態。そうした無力感や孤独感から、人は他者への暴力性と自傷行為という2つの行動を起こしやすくなっています。自分を傷つける行為という意味では、酒を飲んで全能感を得るといった依存症なども同じといえるでしょう。

さらに人々を追い込んだのは、不要不急という言葉で8割の人との交流を避けなければならなかったことです。それによって2割の人との付き合いが想像以上に重要になり、その間の人間関係が問われるようになりました。よほど相思相愛で良い関係であれば別ですが、生活様式の変化から、子どもたちは学校に行けず、親はリモートワークに切り替わっても家に居場所がないという人もいます。家族であっても四六時中一緒にいれば食傷気味にもなるでしょう。家での顔と職場で見せる顔は違うわけですから、気詰まりと感じる人は少なくないはずです。現にコロナ禍でDVや虐待が増加しているという報告があることからも、事態の深刻さがうかがえます。