就任演説が映し出す新大統領の個性
そして、トランプ流は、4年たった今も健在だ。Greatにかわり、私たちが頻繁に聞くようになった言葉は、fraud(詐欺)やfake news(フェイクニュース)。単調で、弾丸のように一方的に批判しまくる手法も健在だ。
特にトランプ大統領とバイデン大統領候補の第一回のテレビ討論会は見るにたえなかったのは記憶に新しい。一人が話し終わらないうちにもう一人が話し始める。もっともそのときはバイデン氏も礼儀をわきまえた討論をしていなかったため、日本語のネット上の書き込みにも、「一番頑張ったのは通訳者だ」「こんな討論会を同時通訳するなんて神業だ」などというコメントを見つけた。
それにしても、今回の大統領選は異例づくしだ。
新たな大統領の任期は来年1月20日に始まることがアメリカの憲法上決まっているが、トランプ大統領自身が敗北を認めていない状況で、1月にバイデン氏の就任演説が無事に行われるのだろうかと不安になる。
2009年1月、オバマ大統領は就任演説で「すべてのアメリカ人が、自分自身への、わが国への、そして世界への義務があると自覚しましょう」といって、責任ある国家としてアメリカが世界に果たすべき義務を訴えた。
しかし、その8年後の就任演説で、トランプ大統領は、「本日以降、新たなビジョンがこの国を治めます。本日以降、すべてはアメリカ・ファースト」と言い、Buy American and hire American(アメリカ製品を買い、アメリカ人を雇います)と強調したのである。
たかが演説、されど演説だ。アメリカのリーダーの言葉がこれからやってくる4年間を読み解くヒントにもなる。新大統領は就任演説でいったいどんな言葉を世界に語りかけるのであろうか。
上智大学外国語学部卒業後、1991年ジャパンタイムズ入社。政治、経済担当の記者を経て、2006年より報道部長。2013年より執行役員。同10月には同社117年の歴史で女性として初めての編集最高責任者となる。2000年、ニーマン特別研究員として米・ハーバード大学でジャーナリズム、アメリカ政治を研究。2005年、キングファイサル研究所研究員としてサウジアラビアのリヤドに滞在し、現地の女性たちについて取材、研究する。著書に『The Japan Times報道デスク発グローバル社会を生きる女性のための情報力』(ジャパンタイムズ)、国際情勢解説者である田中宇との共著『ハーバード大学で語られる世界戦略』(光文社)など。