市民レベルでも信頼と連帯は重要
市民レベルでも信頼と連帯は重要です。たとえばフランスでは2020年3月17日に外出禁止令が出されましたが、即座に市民がSNSで夜8時に帰る医療従事者を拍手で迎えようという動きが起こりました。日本で最初にこのような動きが起こったのは20年4月10日の福岡市役所でしょう。遅いですよね。しかも日本では医療従事者の子どもが保育園に行ったら隔離されるとか、スーパーに買い占めに走るとか、信頼と連帯と、逆のことを一部でやっている。
なぜ、こうなるかというと、正確な知識がないからです。農林水産省のサイトを見れば、トイレットペーパーも食料も十分にあることがわかります。新型コロナウイルスについても、信頼できる情報をきちんと得ることが大切です。
基本は政府の専門家会議の話をよく聞くことです。たとえば憲法改正や女系天皇といったイデオロギーに関する問題であれば、政府の選ぶ専門家の発言をうのみにすることに議論の余地があるのはよくわかります。
しかし今は人の命がかかっています。人命にイデオロギーは関係ないので、どんな政府であっても、最高の専門家を選んで市民の命を救おうと考えるでしょう。だから政府の専門家会議での発言を聞くのがいちばん正しいと思うのです。
歴史上で最も大きな被害を及ぼした感染症の1つはペストですが、流行が収束したあとにはルネサンスが生まれました。ペストがルネサンスを生んだように、今回の新型コロナウイルスも新しい世界を生むでしょうね。
安倍晋三首相が全国の小・中・高校に20年3月2日からの臨時休校を要請し、私が学長を務めるAPUの職員も、小学生の子どもを抱える親は仕事に来られなくなりました。そこで2日で子連れ出勤ができる環境をととのえた結果、仕事の能率は子連れでもほとんど落ちないことがわかりました。
国は働き方改革を重要課題に掲げ、生産性向上をめざしていますが、ニューノーマル(ポストコロナ)の世界では、子連れ出勤やテレワークがふつうになって働き方改革が進むでしょう。少なくともITリテラシーは格段に上がります。もしかすると投票率も上がるかもしれない。リーダーの役割が、いかに大事かをみんながわかったわけですから。ですから、ニューノーマルの世界は希望が持てますよ。そのカギは、やはり信頼と連帯ですよね。
・グローバルな信頼と連帯の重要性を一人一人が自覚する
・ITリテラシーが向上し、働き方改革が進む
・リーダーの役割の大切さが見直されて、きっと投票率が上がる