保険料引き上げは全体の数%?

標準報酬月額の上限は、全被保険者の平均標準報酬月額の2倍になるように決められています。ここ数年、年度末の平均給与の2倍が上限(64万円)を上回る状態が続いており、9月から政令で改正されることになったというわけです。標準報酬月額が引き上げられるのは、約20年ぶりのことです。

2017年度末時点で約4400万人いる厚生年金加入者のうち、約290万人(約6.8%)が上限の62万円に達しており、その多くが新しい上限に変わると見込まれています。ちなみに、標準報酬月額の平均は、2017年3月末では31万8656円、2019年3月末では32万2404円です。

また標準報酬月額の分布は、図表1のようになっています。

標準報酬月額別被保険者数(平成29年度末現在)

月額約2700円アップ。将来の年金も増える

では、実際に保険料はどの程度上がったのでしょうか。

保険料は標準報酬月額の18.3%で、本人と会社が折半で負担しています。これまでの最高(標準報酬月額62万円)は11万3460円でしたが、新設された標準報酬月額65万円では11万8950円となりました。1カ月当たり5490円、本人負担はその半分の2745円アップとなっています。年間では約3万3000円の負担増です。

気になるのは年金額への影響です。

あくまで目安ですが、51歳~60歳など、保険料が増えた期間が10年間の場合、年金は年額で2万円弱増える見込みです。保険料が増えた期間が20年なら、同4万円弱の増額です。

10年間で保険料を約33万円多く払うことになりますから、単純計算では、16年半受け取ればモトがとれる、ということになります。

ちなみに、35歳女性の平均余命は53年、40歳女性は48年、45歳女性は43年、50歳女性は38年です(令和元年簡易生命表より)。あくまで平均ですが、35歳女性では65歳から88歳まで23年間、年金を受け取ることが想定され、保険料が増えるのも悪い話ではありません。さらに公的年金は死亡するまで受け取れる終身型ですから、長生きするほど、受取総額は多くなります。得をするかどうかに目がいきがちですが、公的年金は保険ですから、増えた年金額を受け取れるということは、老後生活の安心につながります。

また公的年金には、障害を負った場合の障害年金、死亡後に遺族に給付される遺族年金があります。

いずれも納めた保険料が年金額を決めるベースになりますから、標準報酬月額が高いと、障害年金、遺族年金とも多くなります。

保険料にも年金にも上限がある

1つ、知っておいてほしいのは、稼げば稼ぐほど年金が増えるわけではなく、上限がある、ということです。

前述のとおり、標準報酬月額は65万円が上限であり、それを超えると、いくら収入が多くても標準報酬月額や年金保険料は増えません。したがって、年収1000万円の人も、年収2000万円の人も、年金保険料も同じ、年金の額も同じ、ということです。

一般的な収入の人でも、公的年金だけでは老後資金は足りないと考えられますが、高収入でリッチな暮らしが身についている人、老後も生活水準を保ちたい人では、一層、「年金では全然足りない」ということが起こりがちです。収入が多い人は多いなりに、老後資金を準備するのが望ましい、というわけです。