Z世代男子、「主夫」はあり得ない

【原田(梨)さん】私はそもそも結婚するつもりがないので、家事もそういう視点で見たことがないです。もともと一人でいても苦にならないタイプだから、パートナーもいらないかなって。働きながら、自分の身の回りのことだけ自分でできればいいと思っています。

【落合くん】今は男子のほうも、結婚相手に特に家事力は求めないですよね。料理ができないって言われても全然責める気にはならないです。今はできなくても、結婚してから少しずつやって慣れていけばいいと思う。

【原田】僕は海外でも若者研究をしているけれど、上海でもアメリカでも、若年夫婦は共働きで、少なくとも平日の夜ご飯は自分たちで作らずにデリバリーとかテイクアウト、っていうのが普通になっているよね。日本はこのコロナでようやくテイクアウトとかデリバリーが増えてはいるけど、まだまだやっていないお店も本当に多い。もっと共働きを楽にするためにも、家族の憩いの時間を増やすためにも、コロナだからではなく、もう毎日くらいの勢いで、テイクアウトやデリバリーが利用されるようになるといいね。若年男子が女子に家事力を求めなくなってきているのだとしたら、海外のようなモデルの夫婦が未来はもっと増えるかもしれないね。

男子は、自分が100%家事をするという選択肢はないのかな? 仕事があるから無理っていうことだったら、男性が家庭に入る「専業主夫」っていうパターンもアリだと思うんだけど。

【落合くん】僕は専業主夫にはなりたくないです。友達にもなりたいっていう人はいないですね。

【曽我くん】僕も同じ。自分が働かないっていう選択肢はないです。

【原田】どうしてなのかな。冷静に考えたら、働かなくて済むならそのほうが楽じゃない?

【落合くん】プライドですかね。クラシカルな考え方かもしれないけど、たとえ収入が低くても、自分にとって何かしら働く、稼ぐっていうのは必須な気がしています。「働かない男性=ヒモ」っていうイメージもあるし。

【曽我くん】そうそう、ヒモの延長みたいに感じる。僕は互いに依存しない、自立した夫婦が理想だから、その意味では奥さんが稼ぐなら自分も稼ぐのが当たり前だと思います。

【原田】なるほど。君たちにとって働くことは必須なんだね。その点では今日参加している女子2人も同じ。その世代同士が結婚するとしたら、やっぱり家事は分担していかなくちゃならない。でも、そこを見据えて家事力を磨こうとしているのは、今のところ曽我くんだけみたいだね。夫婦2人とも家事が苦手だったり、時間がなかったりしたらどうするか──。次回はその点を聞かせてほしいな。

「家事ができる=女性らしい」という意識はあまりない

フルタイム勤務の共働き家庭が増えている今、家事分担のありか方が議論されることも増えてきました。従来、日本では「家事ができる=女性らしい」というような風潮が幅をきかせてきましたが、Z世代の大学生はそんな意識をあまり持っていないようです。

ただ、男子が「分担する」「時間さえあれば分担する」と答えたのに比べて、女子は「できれば家事はしたくない」と回答。この傾向からは、家事のアウトソーシングが増加するのではという予測も成り立ちます。次回はその点のほか、育児分担への意識についても聞いていきたいと思います。

構成=辻村洋子

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。