チームワーク向上のためのバイアスのコントロール

もう一つの目的は「チームでより良い成果をあげるため」です。仕事の内容にもよりますが、大多数の職場では、管理職やチームリーダーのもと、みんなで協働してプロジェクトを進めていくと思います。チームワークを良くして生産性を高めるためにも、自分や他のメンバーに対する自分の中のバイアスをコントロールできるようにすることが大事になります。

例えば、チームに新しく入った方がいたとして、ありがちなのは、新人はできないと決めつけて雑用しか渡さないということです。これが続くと、その方のモチベーションを下げ、アウトプットを出すのが遅くなる……といったケース。でも、その方には、もしかしたら学生時代や他社で身に付けたスキルや知識があるかもしれません。どういうことがやりたいのか、何が得意なのかを話す機会を設け、それを活かすことでチーム全体のパフォーマンスが上がるということもあるでしょう。その時には今の業務に直接結びつかないように見えても、何気ないところでフォローしあえることが出てきたりもします。

こうした取り組みによる成果は、いくつもあります。ライトなものからいえば、オフィスの席替え。人の脳は自分と物理的に距離が近い人を好む傾向があって、席替えやレイアウト変更を行う際に、管理職が何となく自分の話しかけやすいメンバーやリーダークラスを近くに置いたりすることがあります。でも、それではお互いに入ってくる情報が偏るので、バイアスが生じやすくなります。そこでフリーアドレスを採用したり、定期的に席替えをしたりして多様な情報を入れ、バイアスを働きにくくする、といった具合です。オンラインのコミュニケーションでも、最近話してないなという人にちゃんとつないで「最近どう?」と話しかけてみる。リモートワークで雑談の時間が減っていますから、チームで雑談の時間を作り、何気ない会話をフラットにしてみるのも良いかもしれません。

今は、家族にまつわるバイアスに対処するチャンス

家族にまつわるアンコンシャス・バイアスについても触れておきましょう。既婚女性については、一番身近な夫の協力がないとなかなか前に進めないことがありますが、前述のように、女性自身にもバイアスはあります。「家庭のことは自分がやらなくては」「夫はできないに違いない」と無意識のうちに自分が背負ってしまう方は少なくありません。

コロナ禍では、家族重視、家族との時間を大切にしたいという人が増え、家庭のバイアスに対処していくにはポジティブなタイミングだと感じています。夫婦が昼間に一緒にいればいろんなことを自然とシェアできるようになりますし、お互いに相手の働きぶりも見えるので、キャリア形成について話し合う機会が持てるかもしれません。

自然な形で社員側の意識が変わっていき、会社側もそれに対処していく、という動きがより多く生まれてくることを願っています。

そのためにも、引き続き多くの方々に対して無意識バイアス(アンコンシャス・バイアス)をコントロールしていただけるようなアプローチをもっと広めていければと考えています。もちろん、個人だけで対応するのが難しいテーマではあるので、会社を挙げて仕組み化していくことが求められます。アンコンシャス・バイアスは学術的には完全に消えることはないとされているものですから、継続的な取り組みが必須。本気でやるとなると、かなりの長期戦になりますし、それをきちんと応援していきたいと思います。

構成=西川修一 写真=iStock.com

藤原 智子(ふじわら・ともこ)
チェンジウェーブ 取締役副社長

早稲田大学第一文学部卒業後、リクルートへ新卒入社。人材領域の営業・商品企画・パートナー渉外、営業企画の企画統括責任者。その後、個人事業主を経てチェンジウェーブへ参画。組織変革プロジェクト、ダイバーシティ推進、無意識バイアスラーニングツールプロジェクトリード、各種講演、執筆など。