小学生でもアルバイトを始める国もある
著者は、世界三大投資家で超富裕層のジム・ロジャーズ氏に複数回インタビューをし、書籍を何冊も監修しています。ロジャーズ氏はアメリカのアラバマ州生まれで、5人兄弟の長男として弟たちの面倒をみる傍ら、5歳にしてピーナツ売りのアルバイトを始めていたそうです。
そんなロジャーズ氏は娘の教育でも、「お金が欲しければ、仕事か何かをしてお金を得るように教育している」(『ジム・ロジャーズ大予測』(東洋経済新報社)より)ということです。
「長女が14歳の頃、私は彼女に『外に出て仕事を見つけてきなさい』といった。それまでは家の手伝いをすると小遣いをあげていたが、そろそろ外で働く経験をしてもらいたかったからだ。私は、マクドナルドで時給8ドルのパートタイムの仕事を探してくるだろうと思っていたが、彼女はなんと中国語を教える時給25ドルの仕事を見つけてきたのだ。」(同書籍より)
ロジャーズ氏の長女はローカルの有名校で成績優秀で、インスタグラムでも中国語のオンラインレッスンを行うなど精力的に活動をしています。
これはロジャーズ氏など富裕層の家庭だけではありません。私が住んでいるシンガポールの集合住宅のプレイグラウンド(子供のための遊び場)には多くの子供達が集まります。欧米人、インド人、アジア系の子供達が多いです。プレイグラウンドのベンチに座っていると、欧米人やインド人の小学生に話しかけられました。
「あなたの子供のお世話をさせてください」と言って、自分達の名前と連絡先を書いた手書きのチラシを渡されました。内容をみると、子供と一緒に遊ぶという内容でした。確かに、一人っ子で小学生の低学年だと一人で遊ぶのにも退屈をするので遊び相手になってくれるのはありがたいです。そこをうまくついて一人っ子で一人で遊んでいる子供の母親にプレゼンをしたのかもしれません。新しい消費者のニーズなどもついていて賢いなと感じましたし、同じ集合住宅の子供達なので、何かあった際に頼りになるかもしれないと思いチラシを受け取りました。
それにしても見ず知らずの大人に対して小学生が話しかけてプレゼンをするのは非常に勇気がいることでしょう。しかも、仕事の受注のプレゼンです。リーダーはアメリカ系の白人の子供だったのですが驚かされました。欧米の学校では幼稚園の時から人を説得させるライティングやプレゼンテーションの練習を日々行います。詰め込み勉強はあまりしませんが、生きる力を養う教育なのです。また、得意なこと、集中できることを大切にするように促されます。
もちろん子供がお金を稼ぐのはどうかという議論もあります。ですが、得意なことを他人に提供して、お金ではなくお菓子をもらうなどでもよいのです。要するに、何か自分が労働力やサービスを提供することによって得られるものがあるというのを、小さい頃から実践して小さな成功体験を積み重ねることが大切なのです。
自立を重んじる文化のアメリカでは、小学校低学年や幼稚園などの小さな子供達も旅行の際にはそれぞれが自分の荷物を自分で持つことが多いようです。遠足等で使う少額のお金の管理や、ランチをプリペイドカードで買うといったことも幼稚園くらいの低年齢から徐々に学びます。筆者の子供もシンガポールでアメリカ系の学校に通っていますが、3歳から自分のバッグは自分で管理しなければなりませんでした。なくしたり、忘れたりしたら自分の責任になります。また、3歳から学校に行く条件として、自分でトイレなど身の回りの管理が全てできることという規約がありました。もちろん失敗をすることもあり、それに対して子供を責めることはありませんが、親に連絡がきます。このようにして、小さな子供の頃から自立を促されるのです。