女性は魅力的な同性をイジめるのか?
男も女も、なんらかの利益を獲得するか、あるいはいまある利益を守るために「攻撃」を行なう。すべての生き物は「生存」と「生殖」に最適化されているから、当然、生き延びることと同様に性をめぐる攻防も進化したにちがいない。だが女は、「直接的攻撃」を使わない。だったらどのようにして魅力的な男を自分のものにするのだろうか。
女同士が1人の男をめぐって争う場面では、最大の障害は、自分と同じくらい、あるいは自分よりも魅力的な女だ。そう考えれば、女は魅力的な同性に対して「間接的攻撃」を使うのではないだろうか。
じつは、これを調べた研究はいくつもある。思春期の恋愛では、魅力的な女の子が女性から「間接的攻撃」を受けるリスクは魅力的でない女の子より35%高く、魅力的な男の子では25%低い。職場では、魅力的な女性社員は同性の同僚からいじめられ、男性の同僚から歓迎される。
思い当たることがあるひともいるだろうし、「ほんとうなのか」と疑問に思う読者もいるだろう。そこで今回は、相手の魅力によってどのように評価が変わるのかを調べたミュンヘン大学の心理学者マリア・アグーテらの研究を紹介しよう。
研究者はまず、大学年鑑とインターネットのフリー素材から、20代の白人で、眼鏡をかけておらず、肥満でもない300枚の顔写真を選び、男女20人ずつの協力者に10段階で魅力度を評価してもらった。
次に、その顔写真から極端なものを外し、「魅力的な男女(評価7~9)」と「魅力的でない男女(評価2~4)」の4枚を決めた。肌を露出するような姿ではなく、どれも履歴書に貼るようなフォーマルな装いだ。
そのうえで、ドイツでよく知られた雑誌の政治経済部門の編集者を募集しているという設定で、4タイプの履歴書(レジュメ)をつくった。顔写真と名前を別にすれば、学歴、経験(インターンシップ)、スキル、趣味などはすべて同じだ。
こうして準備が整うと、ドイツの大学で学ぶ223人の白人女性(平均年齢23歳)に、採用の一次選考担当者になったつもりで、ランダムに割り当てられた履歴書を読んで10段階で評価してもらった。それとは別に、その応募者と「いっしょに働きたいか」「友だちになりたいか」と、応募者の魅力度をやはり10段階で答えさせた。
その結果を示したのが図表1で、女性の被験者は魅力的な男性の応募者を高く評価する一方、魅力的な女性の応募者を魅力のない女性の応募者よりずっと低く評価した。さらには、魅力的な男性の応募者と同じ職場で働きたいと思い、魅力的な女性の応募者とはそう思っていなかった。
次の実験では、設定をより身近なものに変え、被験者は5分間のインタビュー動画を見て、自分の大学への入学を許可するかどうかを判断した。動画ではプロの役者が同じ質問に同じように答えており、性別と魅力度だけがちがう。最後に、その受験生と友だちになりたいかどうかと魅力度を答えた。
この結果が図表2で、やはり女性の被験者は魅力的な男性の受験者を高く評価し、魅力的な女性の受験者を低く評価した。それと同時に、魅力的な男性の受験者と友だちになりたいと思い、魅力的な女性の受験者とはそう思わなかった。