住宅購入の頭金、子どもの教育資金、自分の老後資金……などのように、目的別にお金を貯めている人は多いのではないでしょうか。しかし、お金の運用を考えたときには、お金を目的別に管理することは、かえって非効率になってしまいます。その理由とは――。

※本稿は大江英樹『今さら人には聞けないけどとっても知りたい投資とお金のはなし』(ソシム)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです(写真=iStock.com/AndreyPopov)

分散投資と財産三分法は鉄則

資産運用において、分散投資は鉄則だと言われています。また、昔から財産三分法(現預金、有価証券、不動産)は資産管理の鉄則だとも言われ、お金はとにかく分散するのが良いと考えられてきました。結論から言うと、これは間違いではありません。但し、どんな資産でお金を運用するのかという対象のカテゴリーを分散しておくのは正しいのですが、お金を目的別に分けて管理・運用するのは間違いです。一般的にはどうもこれについて勘違いしている人が多いように見えます。

まず、自分のお金を運用する場合の資産カテゴリーの分散ということですが、その最大の目的はリスクを低減することです。ここで言う「リスク」とは「価格が変動することによって投資した成果がバラつく」という意味と「価値が下がって損をする」という意味の両方が含まれます。株式などは今後価格がどう変動するかを予想するのはとても困難です。したがって、複数の銘柄、それも値動きの傾向が異なる銘柄に分散投資をすることによって、どのような経済状況になったとしても、投資成果が平準化されるようにしておくことが大切です。

一方、預金には価格変動リスクはありませんが、物価の上昇によってお金の価値が下がると損をするかもしれないというリスクがあります。もちろん、預金の場合はいつでも他の資産にお金を移せるという利便性がありますので、これ自体はあまり大きなリスクとは感じないかもしれませんが、もし将来インフレになった時のことを考えると預金だけにお金を置いておくのは明らかにリスクだと言っていいでしょう。このように異なる資産を保有しておくことで経済環境がどのように変化しても自分の資産が大きな影響を受けないようにするために分散投資をしたり、財産三分法を実践したりすることはとても重要なのです。