5倍や10倍になっている株は数多くある

これほどの例はあまりありませんが、日本でもこの10年ぐらいの間で大きく上がった株はいくつもあります。例えば九州を中心に展開するドラッグストアチェーンのコスモス薬品は2004年の11月に1,310円で上場しましたが、今年の6月18日時点では1万6,880円になっています。しかもこの会社は5月末に1株を2株に株式分割していますので、実質的には投資した金額は25倍強になっています。

またネットでの決済サービスを手がけるGMOペイメントゲイトウェイという会社は2009年のリーマンショック後には90円前後だった株価が現在では1万1,620円になっていますので(6月18日現在)10年あまりで何と129倍にもなっているのです。

インバウンドの増加によってドラッグストアの売上げが順調に推移してきていることやネット取引による決済の拡がりといった現象はいずれも私たちが実感してきたことです。さすがに100倍にもなる株はほとんどありませんが、5倍や10倍くらいになっている株であればたくさんあります。

「身近な変化」に気づくことが大事

このように自分の身近で起きていることで気付いたことについて投資するという発想はとても大事です。例えばリーマンショックが起きた時にどんなことが起こったか。特にアメリカでは大規模なレイオフや解雇が起き、失業してずっと家で過ごす人が多くなったのです。その結果、家でテレビを観て宅配ピザを食べるという人が増えました。実際にリーマンショック後にネットフリックスとドミノピザは米国で株価が100倍になっています。

大江英樹『今さら人には聞けないけどとっても知りたい投資とお金のはなし』(ソシム)
大江英樹『今さら人には聞けないけどとっても知りたい投資とお金のはなし』(ソシム)

今回のコロナ禍でもそれに近いですが、今回は在宅勤務が増えたことによってZoomの利用が急増しています。結果、昨年末には68ドルだったZoomの株価は直近では240ドルと、わずか半年で3.5倍になっています。要するに、「みんながZoomを使うようになったよね。ところでZoomって上場しているのかしら? だったら株価っていくらぐらいなんだろう?」と考えてみることが大切なわけです。

このように投資は身近なところにヒントがたくさんありますが、もちろんそんなやり方で投資すれば全てうまくいくというわけではありません。Zoomの例は、たまたま、今回のコロナウイルスの流行という残念な状況によって短期的な上昇が起きただけです。前述の例のように長期的に成長する企業に投資をすれば、長期的には何倍にもなる可能性はおおいにあります。株式投資の本質が成長性や収益性の高い事業に投資をしたい、そしてそんな会社を応援したいということなのであれば、あまり難しく考えずに気に入ったサービスや製品を提供する会社に素直に投資をするということでも良いのではないかと思います。

大江 英樹(おおえ・ひでき)
経済コラムニスト

1952年大阪府生まれ。オフィス・リベルタス創業者。大手証券会社で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事。定年まで勤務し、2012年に独立後は、「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるように支援する」という理念のもと、資産運用やライフプランニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行った。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。著書に『投資賢者の心理学』(日経ビジネス人文庫)、『定年男子 定年女子』(共著・日経BP)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)、『お金の賢い減らし方』(光文社新書)など多数。2024年1月没。