新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛により、世界各地で「在宅勤務」と並んで注目を集めたのが「在宅教育」だ。今では「在宅教育=デジタル教育」として議論されているが、オーストラリアではインターネットが普及するずっと前の約100年前から在宅教育に取り組んでいる。20年以上、オーストラリア、クイーンズランド州ブリスベンに住む柳沢有紀夫さんが、現地の「ディスタンスエデュケーション(遠距離教育)」やデジタル教育についてリポートする。
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広い国土で発達した「遠距離教育」

オーストラリア北東部、クイーンズランド州中部の牧場。東京都の3倍以上の広さを持つ牧場も多く、飼っている牛の数も数千頭レベルです
オーストラリア北東部、クイーンズランド州中部の牧場。東京都の3倍以上の広さを持つ牧場も多く、飼っている牛の数も数千頭レベルです(写真=Tourism and Events Queensland)

日本の20倍の国土を持つオーストラリアの人口は、沿岸部に集中しています。とはいえ内陸部はまったく人がいない砂漠というわけではなく、主要産業の一つである肉牛を育てる、広大な牧場が広がっています。隣の家までも数十キロ、最寄りの町や学校へは数百キロという牧場も珍しくありません。

牧場に住む子どもたちは、毎日通学するのが困難なこともあります。このため、小学生から寮のある小学校で寮生活を送る子どももいますが、「ディスタンスエデュケーション」(遠距離教育)による自宅学習で義務教育課程を済ませる子どももたくさんいます。