主婦向けだった商品が若者にウケる可能性
【原田】美容や健康グッズ以外では、どんなものが流行りそうかな?
【加藤くん】僕は体験型イベントの「リアル脱出ゲーム」が気になりました。何人かのグループで会場からの脱出を目指すものなんですが、最近は3密を考慮してマスク着用&会話なしで進めるタイプが登場しています。面白そうだし、安心して参加できそうだなと思いました。
【宮本さん】私はオンラインレッスンが主流になってくる気がします。コロナの影響で、今後2~3年はリアルの教室やジムには通いにくくなると思うんですよ。オンライン講師やパーソナルトレーナーから、家でレッスンを受ける人が増えるんじゃないかな。
【門戸さん】料理の時短グッズも人気が出そうです。外出自粛で料理をする若者が増えたと思うんですけど、日常が戻ってきたらなかなか時間がとれなくなりますよね。私も100均で売っているハンドミキサーとか、安くて時短になる商品に注目しています。これがもっと種類豊富になったら、若者も料理やおうちカフェを続けていけると思います。
【原田】なるほど。時短グッズと言えば主婦向けというイメージがあるけど、これからは若者にもPRしていったほうがよさそうだね。他に「こういうものがあったらいいのにな」という意見はある?
おじさんっぽくないマッサージチェアが欲しい
【宮本さん】マッサージチェアは、黒い皮製だとやっぱりおじさんっぽいので、もっとインテリアに映えるカラーやデザインがあるといいですね。それと私たちの世代はSNSでの評判を見て買うことが多いので、インフルエンサーが使っていればすぐに広がりそうです。
【加藤くん】今後も外出の時はマスクが必要だと思うんですが、マスクをしているとスマホの顔認証が使えないんですよ。それができるようなマスクが発売されたらうれしいです。
【原田】それはヒットしそうだね。コロナをきっかけに、若者もこれまで以上に自分の健康を気づかうようになっているんだね。それに、外出自粛が解けたとしても「しばらくは用心すべき」という慎重さを感じたよ。体を気づかいながら家で過ごすという傾向は、コロナ以降も続いていきそうだね。
外出自粛による「巣ごもり生活」で、若者の消費行動にも変化が起きているようです。美容や健康グッズの需要増は幅広い世代で言われていることですが、若者の間では中高年層向けや主婦向けの商品に着目する動きが出始めています。また、ネットを見る時間が増えたことで、かえって消費意欲が高まっている様子もうかがえました。
若者たちは、コロナをきっかけにそれぞれが新しい楽しみ方や安全な過ごし方を見つけています。外出は慎重にという思いも強く、この傾向は日常が戻った後もしばらく続くでしょう。アフターコロナの商品開発やPR戦略のヒントは、ここにあるのではないでしょうか。企業には今後、若者たちが見つけた「新しい過ごし方」に寄り添っていく工夫が求められるように思います。
構成=辻村洋子 写真=iStock.com
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。