地方最強!地方移住に価値を見出す若者たち
【原田】最後に、将来の展望について教えてくれるかな。働き方や生き方について意識が変わった人はいる?
【磯部くん】今回のコロナで、仕事は自然に囲まれた場所で暮らしながらでもできると知り、「地方最強」って思い始めました。地方に住んでも、東京の仕事をリモートでできますよね。地方なら環境もいいし、人口が少ない分コロナの中でも外出しやすいだろうし、30~40代になったら地方に引っ越すのもアリかなと。ただ、地方といっても最低限Wi‐Fiとコンビニはほしいです。
【門戸さん】私は広島から上京していて、卒業後は東京で就職するつもりでした。でも今、Uターン就職もアリかなと考え始めています。広島は結構都会なのに、コロナの影響も東京ほど大きくなかったようなので安心かなと。
【原田】磯部くんの「地方最強説」は憧れも入っているだろうけど、門戸さんの考え方は現実的だね。皆のようにある程度の学歴があると、給料も重視するだろうから「やっぱり東京で働こう」という結論になりがち。今後は、その考え方も少しずつ変わっていくのかもしれないね。
2014年に出た『地方消滅』という本では、地方の大都市から大勢の若者が、中でも特に女性が東京圏に移動し続けているというデータが示されました。このままいくと900近い数の自治体が消滅しかねないという、衝撃的な将来像も描かれていました。しかし、今回のコロナショックで東京での生活に不安を覚え、地方に「安心」を求める若者も出始めているようです。
人間関係の面では、家族とはリアルで一緒に過ごす時間が、友達とはSNSやオンラインを通じた付き合いが増えている様子が見てとれました。家族仲は皆一様に深まったようですが、友達に対してはコロナを機にコミュニティーを広げた人もいれば、逆に取捨選択した人もいるなど意識が変化しつつあるようです。こうした行動は今後、若者の消費意識にどんな影響をおよぼしていくのか──。次回はその点を探っていきたいと思います。
構成=辻村洋子 写真=iStock.com
1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。