アベノミクスにも影響を与えた!?「ニューケインジアン」

その後、ケインズのようにガチガチに公共事業をやるわけじゃないけれど、フリードマンみたいに極端なやり方もやめよう、と「ニューケインジアン」と呼ばれるジョセフ・ユージン・スティグリッツ(アメリカ/1943~)やポール・ロビン・クルーグマン(アメリカ/1953~)が出てきました。格差をグローバル化させたフリードマンの批判者として有名です。

スティグリッツは『入門経済学』(1993)で、市場経済が健全に機能しない原因は、売り手と買い手の情報量に違いがあるからと指摘しています。

またクルーグマンは、経済に重要なのは“生産性”“所得分配”“失業”、と『クルーグマン教授の経済入門』(1990)で定義。それが改善されない理由を解説しています。アベノミクスにも影響を与えた学説として有名ですね。

人間って弱い生き物?「アニマルスピリット」は人を軸に展開

振り返ってみると、古典派から新古典派と呼ばれる経済学の人々は「欲望は忠実に動くはず」「値段が上がったら買わないはず」といった合理的なプレーヤーしか設定していませんが、21世紀には合理的なプレーヤーでない人を設定し、人間の弱さに焦点をあてないと経済を見誤ってしまいますよ、というアニマルスピリットという考え方が登場します。

ジョージ・アーサー・アカロフ(アメリカ/1940~)とロバート・ジェイムズ・シラー(アメリカ/1946~)は、著書『アニマルスピリット』(2009)で、安心、公平さ、腐敗と背信、貨幣錯覚、物語といった5つの側面から、人間の奥底に眠る不合理な感情で市場は動くと論じました。

アダム・スミスに始まる経済学説には、現在のビジネスにつながるヒントがたくさん詰まっています。次回は、さまざまな経済学説はどうビジネスに活かせるか、そんな視点でお話しします。

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蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師

「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。