プリントもオンライン教材も「やらない子はやらない」問題

いま一番心配なのは、子どもたちのつながりが薄くなっていることだ。子ども同士のつながり、また児童生徒と先生たちとのつながりのこと。友達とも遊べない、家でずっとゲームしている。親もコロナ疲れや仕事のこともあって、イライラしている。担任の先生は発表されたけど、すぐ休校になったから話したこともない。

教育委員会や学校がまず向き合うべき問題は、子どもたちの孤立である。プリント渡してお終いではダメだ。

いま、巷にはたくさんの教材や授業動画がアップされてきている。“オンライン授業”という言葉で、メディアも煽りぎみな風潮が一部にある。だが、いくらコンテンツと環境(ネット環境等)があっても、一番の問題は、子どもたちの学習意欲や好奇心があるかどうか、高まるだろうかという点ではないだろうか。

要するに、プリントをたくさん学校からもらった。ネット上もたくさん動画等はある。ネットじゃなくても優れた参考書もいっぱいある。でも、やらない子は、やらない。オンラインかオンラインじゃないかの問題ではないのだ。

オンライン授業よりもまずすべきこと

子どもたちの学習意欲は、おそらく、つながりの希薄化が大きく影響する。先生からの励ましやフィードバックがほとんどない。周りの友達もどうしているかわからない。だから、なかなかやる気が出ない、続かない、あるいは宿題の答えを丸写しするだけ、といった子も少なくないだろう。

個々の先生たちが時間とエネルギーを最も割くべきことのひとつは、ここ、動機付けとフィードバックだと、ぼくは考えている。

授業動画は、ほかのうまい人やサービスにやってもらってもいい(もちろん、よく見知った先生のほうが興味がわくという子もいるから、教師が独自動画などを作ること自体がムダとは言わない)。だが、学習意欲等が低い子のモチベーションを上げるのは、たぶん今のところの科学技術、AIや既存サービスだけでは難しい。顔の見える、信頼のできる人でないと、効果は薄い。とりわけ、家庭がしんどい子なら、なおさらである。

具体的には、ZoomやTeamsなどを活用して、やるべきは授業よりも先に、先生との雑談や児童生徒同士のちょっとした交流のほうだ。朝の会や2者面談(生徒と教師)をオンラインで進めたい。ネット環境等のない子には支援策を講じてほしいが、整備されるまでの間は、別の手段(電話、家庭訪問等)でフォローアップしていきたい。

保護者も、そういう意味で、まずはつながりをつくっていくことを学校や教育委員会に求めていってはいかがだろうか。保護者に言われてやっと動くような教育委員会等ではいけないとは思うが、よかったら、この記事を送り付けることから始めていただいても結構だ。

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妹尾 昌俊(せのお・まさとし)
教育研究家、学校業務改善アドバイザー

徳島県出身。京都大学大学院修了後、野村総合研究所を経て、2016年から独立。全国各地の教育現場を取材し、講演・研修、コンサルティングを行っている。中央教育審議会委員、スポーツ庁、文化庁において部活動のあり方を検討する委員等も務めた。主な著書に『教師崩壊』(近刊)、『こうすれば、学校は変わる!「忙しいのは当たり前」への挑戦』、『学校をおもしろくする思考法―卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』、『変わる学校、変わらない学校』など多数。高1、中2、小6、小3の4人の子育て中。