超簡単! 家計簿なしでできる支出ざっくりチェック
では具体的にどうすればいいのでしょう。まずは自分の経常支出、すなわち日常的に使っている支出額を算出してみましょう。家計簿をつけていれば単にそれを見るだけですが、多くの人はそれをしていませんので、どうやって把握すればいいのか?
まず昨年一年間の毎月の給与明細(もちろん賞与も)を見てください。その最後に載っている手取額を合計すれば、年間の手取り収入がわかります。そこから昨年使った大きなお金、具体的には旅行に行ったり、耐久消費財を買ったりといった大きな支出を引きます。さらに給与天引き以外のローンの返済やお子さんの教育費等があるなら、それも引いてください。こういう支出は比較的金額が大きいので覚えていますし、領収書や振込の控えが残っていますから把握しやすいはずです。
そうやって差し引いた後に残った金額が「経常支出」です。その中身までは今の段階では詳しく調べる必要はありません。で、こうやって実際に金額を出してみると意外と日常の「経常支出」が多いことに気がつくでしょう。また、何に使ったのか、なぜこんなに使ったのよくわからないという「使途不明金」がいかに多いかということにも気がつきます。
もちろんこれだけで十分なわけではありません。でも今回の外出自粛で家にいる間に、おおまかな支出状況をつかんで、「普段、支出に関してはいかに何も気にしていないか、知らないか」ということを知ることが大事なのです。その上で今後はできるだけ家計簿をつけるべきでしょう。幸い、最近では便利な家計簿アプリもあります。現金支払い以外のものはこうしたアプリでほとんどカバーすることが可能ですから、支出の内訳も手間をかけることなく、より明確になってくるでしょう。
支出以外にチェックすべきこと
さらに時間があるなら、支出のチェック以外にも持っている金融商品、株式や投資信託、保険の見直し等も積極的に行うべきです。金融商品というのは、その中身の詳細についてわかっていないことが多いので、こういう機会にこそ、投信の信託報酬や、保険の適用範囲などを目論見書や約款をきっちり読み込んで理解しておいた方がいいでしょう。今回は紙幅の関係で詳しくは書けませんが、機会があればこの辺りにも触れたいと思います。
コロナ禍で自宅に居るのは決して悪いことばかりではありません。友人や家族とのつながりの大切さをあらためて理解する機会にもなりますし、本を読んだり勉強したりする時間も取れます。加えて、日頃は忙しさにかまけて放ったらかしにしてあった「自分の支出のチェック」をすることで、「お金が貯まりにくい体質」から脱却できるきっかけになれば、「禍転じて福となす」となるのではないでしょうか。
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大手証券会社に定年まで勤務した後、2012年に独立し、オフィス・リベルタスを設立し、代表に。資産運用やライフプランニング、行動経済学などに関する講演・研修・執筆活動などを行っている。近著に『定年前、しなくていい5つのこと』(光文社新書)など。