好スタートの新製品をどこまで伸ばせるか

そして17年に発売された同シリーズは見事にヒット。「シニア向けの商品ですが、若い方にも買っていただけました。美味しさに対する評価だけでなく『使い勝手がいい』というコメントが多かったのが新鮮。人気が定着する予感がしました」

「カップヌードル」「チキンラーメン」「日清のどん兵衛」など、現在6種類を展開。麺と、かやく入り粉末スープのセットが3食入り。
「カップヌードル」「チキンラーメン」「日清のどん兵衛」など、現在6種類を展開。麺と、かやく入り粉末スープのセットが3食入り。

「お椀で食べるシリーズ」の売り上げをどこまで伸ばせるかというミッションを担い、次の担当者となったのが藤田美佳さんだ。「シニアマーケットに可能性があることはわかっていますが、そこはすさまじいほどのレッドオーシャン(競争の激しい市場)。まずは同シリーズの現状を正しく把握するために、購買者の属性、販売チャネルなど、大量のデータを片っ端から見直し、売り上げ拡大のヒントを分析しました」

見直したのはデータだけではない。「毎週末スーパーに行き、シニアの方々の買い物の様子を観察したのです(笑)」。シニアの多くは即席麺コーナーに足を向けないことに気づく。そこで彼らがよく利用する総菜コーナーに販売棚を作り、より手に取ってもらえるような工夫も。

また40~50代の女性が、商品を購入しているボリュームゾーンだとわかったので(「発売後」参照)、“シニア向け商品”とダイレクトに強調するのをやめた。幅広い年代に買ってもらえるよう「お椀で食べるから、食卓のもう一品にちょうどいい」という商品の最大の特長を、わかりやすく訴求したのだ。

発売後「シニア向けと強調しすぎない」

藤田さんは「マーケッターとして成長するには、数字から仮説を導き、反対に仮説から数字を導く、そしてレビューするという地道な努力が必要です」と力説する。一方の石原さんは「定性分析と定量分析を行き来して、そこから得られる数字が商品のヒットにつながることが多い。数字は頼もしい存在ですね」と語る。数字といかにいい友達・相棒になれるか。それが優秀なマーケッターになる近道と言えそうだ。

藤田美佳
日清食品 マーケティング部 第1グループ主任
1985年生まれ。キリンビールのマーケティング部を経て2018年に日清食品入社。主に「カップヌードル」ブランドを担当し、同シリーズの市場浸透に注力。
 

石原亜希子
日清食品 マーケティング部 第3グループマネージャー
1982年生まれ。2015年にフレンテ(現湖池屋)より日清食品に出向後18年に転籍。出向時より「チキンラーメン」ブランドを担当。17年より同シリーズを担当。
 

撮影=花村謙太朗

東野 りか
フリーランスライター・エディター

ファッション系出版社、教育系出版事業会社の編集者を経て、フリーに。以降、国内外の旅、地方活性と起業などを中心に雑誌やウェブで執筆。生涯をかけて追いたいテーマは「あらゆる宗教の建築物」「エリザベス女王」。編集・ライターの傍ら、気まぐれ営業のスナックも開催し、人々の声に耳を傾けている。