PRや宣伝は作り込み過ぎると逆効果に

【赤峰沙枝さん】私は松屋フーズのインスタをフォローしています。それまでは「牛丼=おじさん」のイメージだったんですが、これを見て松屋に行きたくなりました。ストーリーズ広告も作り込み過ぎてないし、「着こなし術」ってコーナーがあるから何だろうと思って押したら、松屋のTシャツを着た女の子(笑)。興味をそそるのがうまくて、若者にウケるポイントを押さえてるなと思いました。

【原田】ストーリーズも広告っぽくないところが逆によかったんだね。それで、実際に松屋には行ってみたの?

今回の座談会に参加してくれた8人
今回の座談会に参加してくれた8人

【赤峰沙枝さん】実は牛丼屋さんって行ったことがなくて。松屋もまだなんですが、行ってみたい気持ちはあります。ストーリーズ広告はラフなぐらいがちょうどいいですね。作り込まれていると、「広告見ちゃった!」って失敗した気持ちになります。

【長谷川さん】SNSを見てイメージアップしたのは、私は「洋服の青山【ガールズアカウント】」かな。これは中高生の女子向けに発信しているみたいで、なぜか服とは関係ないペンライトの作り方なども載っているんです。お堅いイメージがあったので、ギャップにびっくりして好感を持ちました。

【原田】皆、意外と企業SNSを見ていて、フォローもしているんだね。若者は興味を持っていないと思っていたから驚いたよ。中でも、投稿や企画が面白いもの、宣伝くささがなくて自分のためになるものが人気のようだね。今回、皆が紹介してくれた企業SNSはどれも面白くて、各企業の工夫をあらためて感じたよ。

今回は、大人の投稿について若者の意見を聞きました。「おじさんっぽい」「おばさんっぽい」と感じるポイントについては、僕のように耳が痛かった人もいたのではないでしょうか。また企業SNSは、イメージアップや親近感醸成のために力を入れている企業も多いと思いますが、若者は「量」より「質」を重視していると感じました。ただし、SNSは評価しても、購買行動には至らないというケースも見られます。若者からの好感をどう利益につなげていくか、企業には工夫が求められます。

写真=iStock.com

原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト、芝浦工業大学教授

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2022年より芝浦工業大学教授に就任。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)、『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)などがある。