高校生や大学生から見ればアラフォー世代はおじさん&おばさん。そんな私たちの投稿を、彼らはどう感じているのでしょうか。個人から企業まで、若者に向けて発信する時の注意点を原田曜平さんが解説します。
携帯電話で顔文字を使う女性
※写真はイメージです(写真=iStock.com/tolgart)
座談会メンバー
宮本 恵理子さん/早稲田大学3年生。女性
丹羽 明日香さん/早稲田大学3年生。女性
須藤 志央里さん/立教大学4年生。女性
長谷川 優真さん/早稲田大学3年生。女性
赤峰 沙枝さん/法政大学1年生。沙都さんの姉。女性
赤峰 沙都さん/法政大学国際高等学校1年生。女性
八巻 彼方くん/日本体育大学4年生。男性
森 孝史くん/埼玉大学2年生。男性

若者が真似して遊ぶ「おじさん構文」とは

【原田】SNSでは僕の世代の投稿を見かけることもあると思うんだけど、皆はどんな印象を持っているのかな。投稿から「おじさんっぽいな」と思うことはある?

【須藤さん】カラフルな絵文字や「σ(^_^;)」みたいな顔文字を多用していると「40〜50代だな」と思います。赤いびっくりマークとかニコニコマークとかもそう。原田さんもよく使っていますよね。私たちの世代はシンプルな文面の人が多いです。

【原田】そうなの⁉ 顔文字も絵文字も思いっきり使ってるよ。恥ずかしいな、そんなの早く教えてくれればいいのに。

スタバのSNSを高評価する宮本さん。
「絵文字や赤いビックリマークはおじさんっぽい」と指摘する須藤さん。「おじさんだなとは思うけど、別に嫌なわけじゃない」とすかさずフォロー。

【須藤さん】おじさんだなとは思うけど、別に嫌なわけじゃないですから(笑)。あとおじさんっぽいのは、読点の位置が変だったり文末だけでなく文中にも絵文字が割り込んできたりする投稿かな。改行がなくて一文が長いのも特徴で、最近は「おじさん構文」って呼ばれて若者の間で人気になっています。

【赤峰沙枝さん】そうそう、わざとそういう投稿をして皆で楽しむというか。独特な文体を真似まねする遊びは一部ですごく流行はやっていて、私は次は「長州力構文」が来ると思っています。プロレスラーの長州力さんのツイートも、すごく独特で面白いんですよ。

【宮本さん】構文は流行っていますよね。Twitterでは数年前から、バンド「WANIMA」の画像と一緒に「オタクくんさぁ……」で始める構文が人気です。WANIMAは陽キャ(陽気なキャラ)っぽいから、隠キャ(陰気なキャラ)の象徴でもあるオタクに意見する感じが受けて、大喜利形式のツイートが流行りました。

ポーズで世代がわかる「オバショット」

【原田】そんな遊びが流行っているんだね。それも面白いけど、さっきの「絵文字はおじさんっぽい」のショックから立ち直れないわ……(笑)。楽しい雰囲気にしたほうがいいかと思って使っているのに。じゃあ逆に、イマドキの若者っぽいツイートってどんな文面なのかな。

【須藤さん】YouTuberでタレントの「kemio」くんのツイッターが参考になるかもしれないです。いつも短文で絵文字もなくて、私たちにとってはすごく見慣れたつぶやきかた。友達のツイートっぽくて親近感がわきますね。イケてない顔を載せちゃうところもいいし、自己ブランディングが上手だなと思います。

「写真の撮り方でおばさん度がわかる」と教えてくれた丹羽さん。
「写真の撮り方でおばさん度がわかる」と教えてくれた丹羽さん。

【原田】なるほど、シンプルなツイートが主流なんだね。さっそく見てみるよ。おじさんに続いて、次は「おばさんっぽい」と思う投稿も教えてほしいんだけど。

【丹羽さん】写真のポーズとか撮り方が大きいのかなと思います。有吉弘行さんがよく投稿している「オバショット」みたいに、座って膝の上で両手をそろえていたり、少し体を傾けて微笑ほほえんでいたりとか。「マダムショット」とも言われていますね。

【赤峰沙枝さん】文章だと、「ねぇ〜」みたいに小さな「ぁぃぅぇぉ」を入れるのもおばさんっぽいかな。私たちの世代はほとんど使わないです。あと加工アプリを使いまくった料理写真とかも。うちのお母さんも、よくそういう写真を自慢してくるんですよ。

若者が評価する企業SNSは?

【原田】大人の文面や写真をそういうふうに見ているなんて知らなかったよ。じゃあ企業SNSはどうなんだろう。中の人(投稿担当者)は全員大人なわけだけど、評価できると思うもの、フォローしているものなどを挙げてみてくれるかな。

バーガーキングのSNSを評価する八巻くん。
バーガーキングのSNSを評価する八巻くん。

【八巻くん】バーガーキング・ジャパンはいいなと思いました。フォロワーの「下北沢店作ってくれや」というコメントに「作ってんで!」って返答して、そのやりとりのスクリーンショットを下北沢店のオープン広告にしちゃった(笑)。企業が一般人の意見に耳を傾けているところに、親近感を覚えました。

【原田】バーガーキングといえば、秋葉原店の縦読み広告も話題になったね。

【八巻くん】垂れ幕広告が、縦読みすると「わすれないよ」「私たちの勝ち」になっていたんですよね。閉店する近隣のマクドナルドへの、バーガーキングからのメッセージじゃないかと言われていました。本当の意図はわからないけど、僕は狙ってやったんじゃないかと。どちらにしてもSNSではすごい勢いでバズったので、宣伝手法だとしたらうまいなと思いました。

好感度の高い企業SNS&キャンペーン

【長谷川さん】友達の間では「CHINTAI」のインスタが好評ですね。投稿ごとに一つの街や駅にフォーカスして紹介していて、そこにいそうな人の姿もイラストで見せてくれるんです。例えば表参道と下北沢じゃ街の雰囲気が違うから、出かける時はそこに合った服を着なきゃっていう子も多いんですよ。そんな時、あらかじめ雰囲気を確認できて便利ですね。

【赤峰沙都さん】私の周りでは「バイトル」の高校生限定キャンペーンが人気です。バイトルのスマホアプリをダウンロードすると、デジタルアートミュージアム「チームラボ ボーダーレス」に無料招待してもらえるもの。SNSで広まって、一時はほとんどの高校生がやっていたんじゃないかと思います。私の場合、せっかくアプリを入れたからと思って、結局バイトもそれで探しました。

【森くん】キャンペーンだと、僕は小学館の「図鑑NEOメーカー」に好感を持ちました。自分で撮った写真を集めてタイトルを決めて、それを新しい図鑑としてSNSにアップできるんです。楽しくていい企画だなと感じました。

【丹羽さん】私もキャンペーンなんですが、キリン淡麗グリーンラベルの「ツイッターおにごっこ」がよかったです。ハッシュタグ「#イインダヨ」をつけて投稿して、企業から返信がなかったら抽選で商品がもらえる企画です。返信がなくてもチャンスだし、返信があれば企業の人と会話できるんですよね。普段は顔の見えないキリンの人と会話できたのがうれしくて、親近感を持ちました。

ノリよりシンプルさが大事

【宮本さん】私はスターバックスのTwitterが好きです。新メニューや季節のオススメなど、本当にほしい情報をいいタイミングでツイートしてくれるんですよ。企業SNSって、世間的にはシャープやタニタが面白いと言われていますが、“中の人ノリ”が強すぎるし、会社とは関係ない情報も多いので私は敬遠しちゃいます。その点、スタバはちょうどいいですね。

【原田】企業側としては、商品以外の話題も入れたほうが読んでもらえると思ってそうしているんじゃないかな。でも、宮本さんにはそれが逆にわずらわしいんだね。あと、そもそもスタバはブランド力自体が強いよね。だから魅力的に感じるっていうのもあるんじゃないかな?

【宮本さん】それはあるかもしれないです。私は企業SNSをそれほどたくさんは見ていないので。でも、余計なツイートが多いと友達のやつが埋もれちゃう。企業SNSの発信はなるべくシンプルにしてほしいです。

PRや宣伝は作り込み過ぎると逆効果に

【赤峰沙枝さん】私は松屋フーズのインスタをフォローしています。それまでは「牛丼=おじさん」のイメージだったんですが、これを見て松屋に行きたくなりました。ストーリーズ広告も作り込み過ぎてないし、「着こなし術」ってコーナーがあるから何だろうと思って押したら、松屋のTシャツを着た女の子(笑)。興味をそそるのがうまくて、若者にウケるポイントを押さえてるなと思いました。

【原田】ストーリーズも広告っぽくないところが逆によかったんだね。それで、実際に松屋には行ってみたの?

今回の座談会に参加してくれた8人
今回の座談会に参加してくれた8人

【赤峰沙枝さん】実は牛丼屋さんって行ったことがなくて。松屋もまだなんですが、行ってみたい気持ちはあります。ストーリーズ広告はラフなぐらいがちょうどいいですね。作り込まれていると、「広告見ちゃった!」って失敗した気持ちになります。

【長谷川さん】SNSを見てイメージアップしたのは、私は「洋服の青山【ガールズアカウント】」かな。これは中高生の女子向けに発信しているみたいで、なぜか服とは関係ないペンライトの作り方なども載っているんです。お堅いイメージがあったので、ギャップにびっくりして好感を持ちました。

【原田】皆、意外と企業SNSを見ていて、フォローもしているんだね。若者は興味を持っていないと思っていたから驚いたよ。中でも、投稿や企画が面白いもの、宣伝くささがなくて自分のためになるものが人気のようだね。今回、皆が紹介してくれた企業SNSはどれも面白くて、各企業の工夫をあらためて感じたよ。

今回は、大人の投稿について若者の意見を聞きました。「おじさんっぽい」「おばさんっぽい」と感じるポイントについては、僕のように耳が痛かった人もいたのではないでしょうか。また企業SNSは、イメージアップや親近感醸成のために力を入れている企業も多いと思いますが、若者は「量」より「質」を重視していると感じました。ただし、SNSは評価しても、購買行動には至らないというケースも見られます。若者からの好感をどう利益につなげていくか、企業には工夫が求められます。