妻子が自分の姓を名乗ると、男性の支配欲が満たされる?

むしろ問題なのは、妻子が自分の姓を名乗ることで、妻子が自分の所有物であるかのような錯覚を男性が抱くことです。本音をひもとくと「改姓した女性に『嫁』として家事・育児・介護を丸投げしたい」「妻子に同じ記号をつけて支配欲を満たされたい」などになるのではないでしょうか。

実は日本のDV加害者の多くが、「結婚で妻が改姓したときから所有意識が生まれた」と証言しています(※1)

逆にいえば選択的夫婦別姓を導入することで、男性の側は「俺は嫁をもらうんじゃないんだ」、女性の側は「私は嫁じゃないんだ」という意識が芽生える可能性があります。

選択的夫婦別姓は、夫の姓を名乗ってもいいし、妻の姓を名乗ってもいいし、そのままお互いの姓を名乗り続けてもいいという制度です。いまの法律では、夫か妻の姓を名乗るかは選べますが、そのほかにどちらも姓を変えなくていいという選択肢が生まれるということです。「私は夫と同じ姓にしたい」という人はそれを選択すればいい。ただ、結婚前の姓を変えたくないという人にはその自由を認めるというだけのことです。

いままでは夫婦別姓というと、イデオロギーの話だと誤解されてしまい、実際に困っている当事者の声が届きにくいところがありました。しかし「これは男女問わず、国民が困っている問題なんですよ」とお知らせすることによって、事態は少しずつ変わっていっています。

※1:DV防止団体aware・山口のり子代表の2015年11月30日東京新聞寄稿参照

構成=長山 清子 写真=iStock.com

井田 奈穂(いだ・なほ)
「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長

本業はIT企業の会社員。Twitterでつながった仲間と、地元議会に陳情書を提出したことをきっかけに2018年11月、団体を設立。約1年で37件の意見書を地方議会から国会に送り、国会議員への直接陳情も続けている。クラウドファンディング「#自分の名前で生きる自由」実施中。