「いじめ」加害者になる子の特徴

中学生におけるいじめ加害の要因を検討した結果、男女共にいじめ加害の経験をした子は、いじめ加害を経験していない子に比べて、有意に親への愛着得点が低く、学校全体への不満感と抑うつ傾向が高いことが報告されています。

いじめの中でも、ネットいじめの加害を行う子は、そうでない子に比べて、「親が自分の携帯電話、インターネットなどの利用状況に対する把握が低い」と考えている傾向が高く、ネットいじめと実際のいじめ両方を行う子どもでは、親への信頼感や親との情動的な繋がり度合いが有意に低いことが報告されています。

愛着不形成がもたらす脳の異常

愛着がうまく形成できないことは、脳の発達にも影響することがわかっています。愛着が不安定で見捨てられ不安が高い人では、帯状回や側頭葉と呼ばれる場所の発達度合いが小さいと報告されています。また、幼少期に虐待などを経験した人でも、帯状回と海馬が小さくなっていることが報告されています。海馬や帯状回が小さくなっている状態は、戦争から帰還したPTSDを抱える兵士でも観測されています。

親子関係のあり方が、その後の人間関係や脳の発達まで含めた多岐に渡って影響をするということを、どこか心に留め日々子どもと向き合っていきたいものです。

参考文献
・Atzil S, Hendler T, Feldman R. Specifying the neurobiological basis of human attachment: brain, hormones, and behavior in synchronous and intrusive mothers. Neuropsychopharmacology. 36, 2603-15. 2011
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・Bretherton, I. Internal working models of attachment relationships as related to resilient coping. 1996.
・Chapple CL, Vaske J. Child neglect, social context, and educational outcomes: examining the moderating effects of school and neighborhood context. Violence Vict. 25, 470-485. 2010
・遠藤利彦 アタッチメント理論の現状と課題: 進化・発達・臨床の3つの視座から.子どもの虹情報研修センター紀要 No.8 23-38. 2010
・Fonagy P, and Luyten P.A developmental, mentalization-based approach to the understanding and treatment of borderline personality disorder. Dev Psychopathol. 21:1355-1381. 2009
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細田 千尋(ほそだ・ちひろ)
東北大学大学院情報科学研究科 加齢医学研究所認知行動脳科学研究分野准教授

内閣府Moonshot研究目標9プロジェクトマネージャー(わたしたちの子育て―child care commons―を実現するための情報基盤技術構築)。内閣府・文部科学省が決定した“破壊的イノベーション”創出につながる若手研究者育成支援事業T創発的研究支援)研究代表者。脳情報を利用した、子どもの非認知能力の育成法や親子のwell-being、大人の個別最適な学習法や行動変容法などについて研究を実施。