高回転率を実現した3つの条件とは
それでは、俺のフレンチ・イタリアンは、どのようにして高い回転率を実現しているのでしょうか? まず注目したいのは非常識ともいえる「高い原価率」です。いくら低価格でも、「安かろう、悪かろう」ではお客はお店を利用してくれません。俺のフレンチの魅力は、50~60%という高い原価率にあります。ファストフード店や牛丼チェーンなど、代表的な飲食店では、食材の原価率は30%前後です。原価900円の肉を、高級店では3000円前後で提供しています。しかし、俺のフレンチでは、一流店と同じ品質の肉を1500円程度で提供しています。グラム当たりに直すとほぼ半値になります。お客が殺到するわけです。
二番目は、「立ち食い形式」だったことも、高回転率の経営を実現できた要因の1つです。一般的なフレンチ店のテーブルは、おおむね4人掛けです。2人で来店しても相席はしないので、ムダな席が生じます。それだけで、テーブルの回転率が落ちてしまいます。ところが、俺のフレンチの場合は、立ち食いのため席数に縛られません。1つのテーブルを3~4人で囲むので効率がいいのです。
立ち食い業態では、お客は長い時間は疲れて立ち続けられないため、自然に滞在時間も短くなります。実は、「座り心地の悪さ」で回転率を高めるという発想は、コーヒー店のドトールに由来しています。ドトールの店内の座席は、硬くて座り心地が良くない設計になっています。マクドナルドも同様な椅子のデザインになっています。
いきなりステーキもお手本にした立ち食い方式
この立ち食い方式をコピーしたのが、ペッパーフードサービスが運営している「いきなりステーキ」です。同チェーンは、立ち食いのステーキを、例えば、「100グラム500円」のように、グラム単位で価格を設定しています。食品スーパーで採用されている「ユニットプライシング方式」をレストラン業態に応用したものです。近頃は、郊外店で一部の店を閉めるところも出ていますが、これまでは俺のフレンチをしのぐ急成長を遂げてきました。
ちなみに、「いきなりステーキ」のアイデアを思いついたとき、ペッパーフードの一瀬邦夫CEOは、「俺の株式会社」の坂本社長に電話を入れて、「俺の」の事業形態を模倣することについて、諒解を求めたとのことです。数年前のインタビューで、坂本社長ご本人から直接その話を伺ったのですが、事業家として立派な振る舞いだと感心したものです。