謝ることができない親たち

Cさんは有名進学校に通っていた。しかし、大学には進みたくないと考えていた。それで母親と意見が対立した。「大学に行かないのなら家を出て行きなさい」と言われ、カリヨンにやってきた。

おおたとしまさ『ルポ 教育虐待』(ディスカヴァー携書)

カリヨンでは、子どもを保護して落ち着いてきたら、子どもがどんな思いで生きてきたのかを、子ども担当弁護士やスタッフが慎重にヒアリングする。それを文書にまとめ、親に伝えることにしている。

すると大概の親は「子どもがそんなに苦しんでいたなんて知らなかった」と言ってショックを受ける。「でも、そういう親は、『ごめんなさい』が言えない」と坪井さん。代わりに「そういうつもりではなかった……私はこういうつもりだったんだ!」と自己弁護に入る傾向があるそうだ。

この母親も例外ではなかった。自分の考えを曲げず、「帰ってくるなら、私の言うことを聞きなさい」と言った。

Cさんはカリヨンにとどまる選択をした。そして「私は大学に行かない。社会に出る」と母親に伝えた。Eさんは自立援助ホームの支援を受け、働きながら通信制の大学に通っている。親のお金には頼らず、10年かかってでも大学を卒業するつもりである。

「この選択は見事だと思いました。親元に戻っていつまでも服従するよりも、気高く自分の道を歩むことを選んだのですから」

教育虐待に陥らないためのセルフチェック

教育虐待に陥らないために、親は自分自身に次のように問いかけてほしいと坪井さんは訴える。

(1)子どもは自分とは別の人間だと思えていますか?
(2)子どもの人生は子どもが選択するものだと認められていますか?
(3)子どもの人生を自分の人生と重ね合わせていないですか?
(4)子どものこと以外の自分の人生をもっていますか?

これができていないということは、親が子どもの人生に依存しているということ。「共依存から虐待は始まる」と坪井さんは指摘する。

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おおた としまさ(おおた・としまさ)
教育ジャーナリスト

1973年、東京都生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。リクルートから独立し現職。近書に『21世紀の「男の子」の親たちへ 男子校の先生たちからのアドバイス』。