高福祉高負担で親ペナルティ無しの国も

技術の進展によってケア労働の負担が減ったとはいえ、共働きの夫婦は何らかの形で家族以外を頼らざるを得ません。もちろん、日本の男性が家事・育児をしないという課題はあります。しかし、それだけで問題が解決するかどうかは微妙だと思います。

北欧やヨーロッパの一部では、育児などのケアサービスのほとんどは公的機関によって提供されています。それぞれの家庭が直接ケアワーカーに報酬を払うのではなく、税金や社会保険料として支払われたお金を使って、政府がケアワーカーを雇用したり、民間企業に委託をしたりして、サービスを提供しています。こういったサービスを「社会サービス」といいます。日本でも、保育においては部分的にこのような仕組みをつくり上げています。

民間のサービスにしてしまうと、低所得者が利用できないぐらいコストが高くなってしまいます。所得格差に関わらず、必要な人が利用できるようにするためには、政府が公的資金でサービスを提供する必要があります。

そのためには、政府からの多額の補助金が必要になります。補助金が少ないと、賃金水準の高い地域で保育士が不足するなどの問題が起こります。実際に、東京都の待機児童数は突出して高くなっています。保育士の報酬を一定以下に抑える必要が出てきてしまうため、「他の仕事をしたほうが稼げる」ようになってしまい、保育士になる人が減ってしまうのです。

ですから、政府からの多額の補助金は、ケアサービスの十分な提供を行うためには欠かせません。例えば北欧社会では、社会サービスを得るために政府に支払う税金や社会保険料はかなり高い水準になっています。「高福祉高負担」が実現しているのです。