人はライバルの不幸を本能的に喜んでしまう

前述のように自分の属する集団の中で他より自分を良く見せることは、本能的な生存競争にも関わります。また他者より自分が勝っているという優越感を得ている時、あるいは、自分より活躍していたり、幸せそうだったりして嫉妬の対象だった人が突然不幸にあった時、悲しいことに、脳の中では「報酬系」「快楽中枢」が活動していることも明らかになっています。

そしてこの感情は、怒りや悲しみなどと同じ、非常に原始的な感情であり、個人の意思以前に、本能的にそうなってしまう傾向があるといえます。「自分が特別になれる状況をつくろう」と躍起になる身近な人が思い浮かぶはずですし、だれしも多かれ少なかれ思い当たる節があるかもしれません。

周囲を操作したり比べたりするよりも自分磨きを

ヒトは、豊富な知識を用いて他の生物にはない高度な社会性を持つ中で、個々が様々な役割を担っています。

現代における人の魅力とは、単純な身体の美しさだけでなく、身体的特徴を手がかりに感じるその人の道徳性や価値観を含めた統合的なものから判断されるものだと言えます。

そのため、周りを変化させたり環境を操作したりしても、魅力的な人にはなれないですし、逆に、美しい人や若い人の横にならんだからといって、自分の魅力が半減することもありません。自然淘汰されることなく進化を遂げてきたヒトは、イリュージョン等の虚偽情報にだまされずに、その人の魅力を判断できる脳をもっています。

他者や一般的な美しさの概念にとらわれ、その比較のなかで、マウントしたり一喜一憂したりすることは全くもって無駄なことです。道徳性や価値観等という内面も含めた自分の魅力をみつけ、それを最大化していくことが、“魅力的な女性”でい続けるための正しい方法といえるでしょう。

参考文献
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