親世代とはまったく異次元の世界へ
ところが高度成長を終焉させた日本経済は、21世紀に入り急速に成熟社会へと転換を余儀なくされました。世界有数の豊かさを手に入れた日本では、資金需要が減退して銀行預金はだぶつき始めます。経済の仕組みってけっこうシンプルなもので、つまり20世紀高度成長時代は資金が足りなくて、産業振興の需要が旺盛だったので、預金は銀行にとってとてもありがたく、ゆえに高い利息を付けて喜んで預金を受け入れていましたが、21世紀に入り経済活動が成熟して資金需要が衰える中では、預金が余剰資金になってしまい、利息がとうとうゼロ水準になってしまったのです。このように、金利は資金の需要と供給を反映して動くものなので、ゼロ金利時代に入って久しい日本では、預金がちっとも社会のためにならなくなったというわけです。
さて親世代の高度経済成長時代は、目覚ましい経済拡大が続いて、生活者もすべからくその分だけ所得が増えて豊かになる。おまけに預金しておけば利息が付与されお金も相応に育ってくれました。ところが皆さんが物心ついた時以降ずっと続いたままのゼロ金利時代は、経済成長もなくなったために所得も伸びず、預金をしてもお金は全然増えないという、親世代とはまったく異次元の環境に換わってしまったのです。
ゼロ金利なのに預金増加のナゾ
さらに経済停滞した日本は長期デフレという経済の病気に冒されて、世界経済の安定した成長から取り残されたまま、気が付けば世界有数の豊かな国とはだんだん言い難くなって来ています。そして生活者はそうした状況を肌で感じ、みんな預貯金をせっせと積み上げることで将来不安を和らげようとしているため、ゼロ金利の預貯金はもう1千兆円規模にまで増加の一途をたどっているのです。皆さんの多くは、今でも親世代から教えられた「預金は良いこと」の呪縛に囚われていませんか?