支出の優先順位が根本的に違う
シンガポールでは、女性が家庭外で働くことの「機会費用(ある選択を行なったことによって、得ることができなかった経済的価値)」が非常に低くなっているのです。シンガポーリアンの中間層の月収は40万円程度なので、それぞれ月5‐10万円程度のメイドや保育園を利用したり、外食やテイクアウトに変えたり、タクシーを利用したとしても働くほうが断然おトクだと考えるのです。
月収が20万円程度の販売員やネイリストの外国人労働者の中にも、子どもはマレーシアなど外国にいる親に預けて平日はシンガポールで働くという人もいます。便利な中心部に住んでいてメイド部屋がない、他人と一緒に住むのに抵抗がある、などの理由でヘルパーを雇っていない家庭も週1、2回は掃除の人やベビーシッターに来てもらうことは一般的です。掃除サービスやベビーシッターの1時間当たりの料金は日本よりはやや安く1600円程度です。
日本人の場合は、ネイルや美容院など美容費や被服費などにかけた後に余ったら家事代行に使うという考え方の人が多いです。しかし、シンガポールの女性はネイルなど一切しなくて、普段着はTシャツと短パンとビーチサンダルという人でもヘルパーを雇っています。支出の優先順位が根本的に違うのです。
女性が罪悪感をもつ必要がない
シンガポールでは、ママが家庭外で働くのは当たり前。そのほうが経済的にトクだと国中の老若男女が思っているので、女性側も罪悪感が少なくて済みます。
シンガポールに行くまでの私は、フリーランスで働きながらもベビーシッターに預けている時間以外は子どもの面倒をすべて見ていました。
遡れば、出産直後からおかしな罪悪感を抱くことが多々ありました。その一つが母乳育児です。私はたまたま母乳育児を強く推奨する病院で出産・入院することになりました。そこでは、母乳が出ないと助産師さん達に怒られるばかり。個室代を含めると100万円も払ったのにどうしてこんなに押し付けがましくホスピタリティーがないのだろうと、シンガポールのサービスを知った後は首を傾げてしまいます。