“お手伝い感覚”からの卒業を!

すでに結婚していて、今からパートナーの男性にもっと家事をしてもらいたいという場合は、男性が家事をしたら大いに褒めることです。仕事一辺倒、残業ばかりの男性はカッコ悪くて、家事や育児に一生懸命な男性はカッコいいんだという価値観を家庭内でつくっていくといいと思います。そして「ともに仕事も家のことも担う」という感覚を夫婦で養うといいでしょう。ちなみにこの「家計は夫と妻の両方で支えるべきという人の割合」についても、日本では45.6%と低く、世界でワーストです。

スウェーデン人に「こちらの男の人は家事をよく手伝って偉いですね」と褒めると、「手伝いじゃないでしょ。一緒にやることでしょ」とたしなめられてしまいます。家事に主従の関係をつくらないことが大事です。

男性の家庭進出では、男女の分担を決めすぎないことも大切です。お互いに急に重要な仕事が入って残業となり、その日に分担していた家事ができないこともあります。そんなときは、できるほうが担当しようくらいの鷹揚な気持ちをもったほうがうまくいくでしょう。

男性の家庭進出を阻む女性は要注意

それから、男性が従来女性ばかりだった世界へ進出することを、女性自身がさまたげないことも重要です。私も経験していることですが、PTAは会長だけが男性で役員はほとんどが女性というケースが多いですし、子どものスポーツクラブでコーチは男性だけど、サポートする人はみんな女性ということも珍しくありません。スウェーデンでは、そういった性別による偏りがあまりないように感じます。

日本では男性が手を挙げてPTAやスポーツクラブの仕事を手伝おうとしても、女性側が「女性だけのほうが、もっと砕けた話ができるのに」という雰囲気になることがあります。男性の担い手を増やそうと思っても、「うちのダンナにはそんな役はムリムリ」と遮断してしまう人も少なくありません。女性が自分たちの世界に男性の進出を阻むことは、男性の家事の分担をさまたげることにつながっていくのです。ブーメランのように女性側のデメリットとして返ってきますから、そこは注意したほうがよいと思いますね。

鈴木 賢志(すずき・けんじ)
明治大学国際日本学部教授・学部長
1992年東京大学法学部卒。英国ウォーリック大学で博士号(PhD)。97年から10年間、ストックホルム商科大学欧州日本研究所勤務。日本と北欧を中心とした比較社会システムを研究する。

構成=Top Communication 撮影=向井渉