「かっこいい!」という素朴な憧れで、駐機場(ランプ)業務に飛び込んだ後藤さん。今は男性の部下を率いるまでになったがハードな力仕事や特殊車両の操作に、人知れず苦労したという。
後藤麻里●ジェットスター・ジャパン 空港本部 成田空港支店 リーディングハンド。東京都生まれ。2008年、日本外国語専門学校を卒業後、外資系航空会社に入社。10年、国際航空旅客サービスに転職。12年、現社へ転職。15年、同社リーディングハンドに昇格。

チェックイン業務から「駐機場のプロ」に転身

酷暑の続いたこの夏、成田空港の駐機場の日中の気温もまた、生半可なものではなかった。コンクリートの照り返しで40度を超える日も多く、飛行機が到着すると、排気熱で周囲の温度はさらに上がる。待機用のスペースから空気が揺らめく屋外に出ると、たちまちのうちに汗が噴き出した。

「こういう日こそ、やる気が出ます。いかに素早く仕事を片付けてやろうかって」

後藤麻里さんはそう言うと、白い歯を見せて笑った。その表情は凛々(りり)しく、強がりを言っているようには見えない。ジェットスター・ジャパンで駐機場(ランプ)業務を担当する彼女は、3人1組のチームを束ねる「リーディングハンド」を務める唯一の女性だ。

「大変なのは、暑い日だけじゃないですからね。台風の日も横殴りの雪が降る日も、『時間通りに安全運航』が私たちの役割です」

ランプ業務は「ランプエージェント」と呼ばれる専門職が担っている。航空機の誘導や牽引(けんいん)、荷物・貨物の搭降載、給水や汚水処理――。大手航空会社では分業で行う作業も、LCC(格安航空会社)では作業効率を高めるため、1人で複数をこなす。しかも離発着の間隔が短いため、一連の作業を30~40分で終えなくてはならない。

エンジンの轟音(ごうおん)から鼓膜を守るため、右耳に耳栓、左耳にインカムをはめるのが基本のスタイル。指示や報告のたびに大声を張る。