Q:それぞれの数値が高いと、どんな病気の恐れがあるの?
高血圧、高コレステロール値、高血糖は動脈硬化の危険因子です。動脈硬化は血管の病変。高血圧や耐糖能異常(糖尿病)は血管壁を傷つけ、そこにコレステロールがたまり血管を詰まらせます。年齢とともに血管に弾力性がなくなるのも大きな原因。若くてもコレステロール値が高ければ心筋梗塞の可能性もアップします。症状がないからといって高数値の血圧を放置することは、30代でも脳出血のリスクとなります。
血管をしなやかに保っていた女性ホルモンの量が低下すると、血管の劣化もどんどん進行。また、肥満や喫煙はさまざまなリスクをもたらす強力因子。受動喫煙にも注意を。
Q:肝機能検査の数値は、それぞれ何を表すの?
ASTとALTは肝臓の細胞が壊れたときに上昇する酵素で、肝機能の障害や炎症をみる中心的な数値。ASTは心臓や筋肉にも存在するため、通常はALTと組み合わせて評価します。γ-GTPは肝臓や胆道の異常にいち早く反応する酵素。このほか、肝機能をみる酵素の多くはほかの臓器にも含まれ、ALPは甲状腺機能異常、LDHは心臓や血液疾患でも上昇します。ALPは女性に高い人も多く、更年期に上がることも。
Q:「γ-GTP」が上がるのは、お酒の飲みすぎということ?
γ-GTP値がアルコールと関係があるのは本当。ただし、数値が上がりにくい人がいる半面、飲酒習慣のない人が高くなるケースも。脂肪肝や薬の影響でも上昇し、女性が上がりやすい数値でもあります。「健康日本21」では、節度ある適切なアルコール量は1日20g、1週間で140g以下としています。
近頃は脂肪肝から肝がんへ進行するケースが増加傾向に。脂肪肝を単なる暴飲暴食のツケと侮るなかれ! 内臓脂肪が多めと指摘された人は腹部超音波検査も併せて実施を。
Q:「尿タンパク」が確認されたら、腎臓病の恐れあり?
尿タンパクには、発熱、過激な運動、ストレスなどで起こる一過性のものと、腎臓に異常が生じて起こるものがあります。後者の場合、尿タンパクを長い期間放っておくと、自覚症状が出た頃には腎臓病がかなり進行していることも。+2以上の場合は要注意です。腎臓は血液のろ過や、必要な物質を再吸収する働きをする臓器。腎臓の機能低下は、高血圧症や脳卒中、心臓病などの血管系疾患の原因にもなります。
Q:「クレアチニン」で何を見ているの?
クレアチニンは腎臓にある糸球体のろ過機能をみる検査項目。ただし、数値が上昇するのは腎機能が50%くらい低下してから。早期や軽度の腎機能の低下は評価できません。A判定でも、できればクレアチニン値からeGFR(腎機能の推定値)を計算して、現在あるいは将来的に腎臓病に注意したほうがよいか判断することも大切です。クレアチニンは筋肉量に比例するため、基準範囲には男女差があります。
機能は遺伝しやすく、改善には体重管理と減塩が重要。肥満は血圧を上げるホルモンを増やし、細胞が代謝したゴミも増やします。尿として排せつする腎臓の負担に。
医学博士/常喜医院院長
慈恵医大新橋健診センター・非常勤診療医長を兼務する健康診断(人間ドック)のエキスパート。大手企業の産業医としても活動中。著書に『マリ先生の健康教室 オトナ女子 あばれるカラダとのつきあい方』(すばる舎)。
構成=横山久美子 イラスト=窪田エリー