かつて研修で学んだはずのビジネスマナーも、忙しい日々の業務の中で細かい点があいまいに。年間2500人にマナーを伝授する北條久美子さんは「マナーはさらなるステップアップを狙うベテラン世代こそ再認識してほしい知識」と言う。初歩から応用まで、ざっとまとめて総復習しておけば自分も安心、後輩にも堂々とアドバイスできます。

マナーの神髄は、コミュニケーション

最近の名刺交換、マナーに則していたか自信はありますか? 経験を積みすぎて、もはや無意識に体が動いているかもしれませんが、油断大敵。もしかしたら取引先の相手や上司が、仕事の場面でのあなたの振る舞いを気にしているかもしれません。そして日々の業務態度や印象の積み重ねが、社会人としてのあなたの信頼度を決めているかも……。新人研修以来、あらためて検証することがなかったビジネスマナーですが、実はキャリアを重ね、ステップアップを狙うベテラン世代こそ、再確認してほしい知識なのです。

イラスト=なかのりか

武士道に「守破離(しゅはり)」という言葉があります。まず基本を守り、相手によって対応を変化させ、あくまで基本をベースにしながら、最後には自分のやり方を手に入れるという教えです。ビジネスマナーも同じ。必要な決まり事を知っていれば、何事にも臨機応変な対応ができて信用を得られ、信頼に基づいた人間関係ができていれば、いずれ大きなチャンスが与えられる、ということだと思います。

仕事のスキルも重要ですが、組織ではステップアップするほど、人と人をつなぎ、人を動かす高度なコミュニケーション能力が問われるもの。極論を言えば、仕事の成功は「人と人の関係」にかかっています。どんな場面でも、どんな立場の人と対峙(たいじ)しても、堂々と対応でき、なにより相手から信頼を得るためには、日々小さな信用を積み上げ、ていねいで適切な対応を心掛けることが大切なのです。そしてどう対応すべきか迷ったときに、頼りになる知識がビジネスマナーです。どんな場面でも、マナーを踏まえて行動することで、相手への敬意を態度で示し、人間関係を深めていくことができると、私は考えています。

この春、新人の指導を任される人もいるでしょう。後輩を正しく導くためにも、長いお仕事人生の中、少々曇ってぼやけてしまった「仕事の決まり事」をブラッシュアップするためにも、いま一度、ビジネスマナーの基礎・基本をおさらいしておきましょう。