主婦時代に「何歳で大学院卒業、何歳で教授」と未来予想図を

非常勤講師になれればいい、と思っていたので、テレビ局に受かったときより、何十倍もうれしかったです。しかしそこで義父や夫から「いくらなんでも専任だなんてとんでもない。合格したことを誇りに思って、主婦に戻りなさい」とストップがかかりました。絶対家庭に迷惑をかけない、そうなったら辞めますと説得して、晴れて専任講師となれました。

その後は内部昇進で、助教授、准教授、教授、副学長となり、2018年で20年。教授になったときに、義父に「よく頑張ったね」とねぎらわれ、「ああ、われながらよくぞ続けてこられた」と自分を褒めてあげました(笑)。決して順風満帆だったわけではありません。大学入試で業務が大変な時期に、娘が溶連菌に感染して命の危険にさらされたり、学校のお母さんたちに「○○ちゃんはいつもママがいなくてかわいそう」と聞こえよがしにイヤミを言われたり……。海外での研究も、子どもを日本に置いていけないので断念しました。

思い返せば、毎日もんもんとしていた主婦の時代には、未来予想図を描いていました。「何歳で大学院卒業、何歳で教授になる」と。当時は荒唐無稽で、自分でもありえないと思いながらも、1度決心したら、地下に潜ってひたすら努力をするしかないんです。何度もくじけそうになりましたが、ちょっとずつ山を登り、登っている人間にしか見えない景色をどうしても見たかったし、この先も見てみたい。頂上はどのような景色かわからないですが、それが人生の面白さ。何歳になっても登り続けていたいのです。

▼HISTORY
1983年 22歳
フジテレビジョンにアナウンサーとして入社。ニュース番組等のキャスターを務める
1989年 27歳
結婚退職して専業主婦になるも、アイデンティティーの喪失でもんもんとした日々を送る
1991年 30歳
大学院に入るべく毎日図書館に通い、ひたすら勉強
1992年 31歳
慶應義塾大学大学院経営管理研究科進学
1994年 33歳
MBA取得。同大学院商学研究科博士課程進学
1995年 34歳
出産。大学院を1年休学
1998年 37歳
同大学院経営学専攻博士課程修了。公募で明治大学短期大学専任講師として採用される。家事や子育てとの両立に奮闘
2009年 48歳
内部昇進で教授になる

構成=東野りか 撮影=神ノ川智早