「悩みなさそうな顔をしている」と声をかけられます

法科大学院に進学してからは、同じ目標を持つ仲間に出会えて、気分が楽になりました。でも司法試験で多くの仲間が1回で合格するなか、私は落ちて孤独な浪人生活に。泣きながら勉強して、2回目の挑戦で受かり、ようやく弁護士への扉を開くことができました。

弁護士になって6年間は刑事事件の弁護が専門でしたが、それは法科大学院の先生の影響が大きい。先生はある有名な殺人事件の被疑者の弁護人でしたが「物事を縦から見るのと横から見るのとではまるで形が違って見える。偏見や先入観を持つと真実を見失うし、99%クロと思える被疑者でも、思ってもみなかった角度から光を当てるのが刑事弁護人のスピリットだ」と教えてくださった。

まさに目からウロコ。実は大学時代、本当は東京で新聞記者になりたかったんです。面接で「あなたに、こんな地べたをはうような仕事ができますか?」と言われました。地味な仕事は嫌いじゃないのに、外見で判断されてしまう。前職でも波風を立てる「問題児」扱い。そんな私だからこそできる仕事なのじゃないのかなと思ったのです。

今はもう1人の弁護士と事務員を入れて、3人体制の小さな事務所を構えています。経営は大変な面もあるけれど、自由に仕事ができているので幸せ。裁判所で知り合いの弁護士さんに会うと「いつも悩みがなさそうな顔をしているね」なんて声をかけられます。そんなふうに見えているのならうれしい! 弁護士になる前は下を向いて暗い顔をしていたけれど、ほしかった自由をやっと手に入れられたからかな。

▼HISTORY
1997年 22歳
札幌の大手情報通信会社に総合職として入社。マーケティング、企画、広告宣伝等に携わる。保守的な社風になじめず、働きながら違う職業を模索する
2000年 26歳
結婚退職し、大阪府へ移住。偶然見つけた司法試験予備校のパンフレットにピン!とくる
2001年 26歳
司法試験予備校へ通い、寝る間を惜しんで勉強する
2005年 31歳
大阪市立大学法科大学院入学
2008年 34歳
司法試験に2回目の挑戦で合格
2009年 35歳
大阪弁護士会に登録
2010年 35歳
大阪パブリック法律事務所に入所。刑事事件や離婚事件を200件以上担当
2016年 41歳
法律事務所「エクラうめだ」を開設

構成=東野りか 撮影=神ノ川智早