9条成立の真相に迫る、貴重なインタビュー

最近いちばん感銘を受けたのは、武器輸出について取材するようになってから出会った福島雅典先生(TRI臨床研究情報センター長)にすすめられた、『日本国憲法―9条に込められた魂』です。福島先生は医師ですが、歴史書や外交政策の本を大量に読まれている方。教えていただいた本の中でこれが一番わかりやすく、何より心を揺さぶられました。

(左)『日本国憲法―9条に込められた魂』鉄筆(編集)鉄筆文庫/500円
(右)『「道タオ」の教え―無為自然に生きる』島田明徳 PHP研究所/古書で入手可

憲法第9条はどういう経緯で生まれたのか、日本国憲法をつくった幣原(しではら)喜重郎元首相が亡くなる10日前、秘書役の平野三郎さんが行った貴重なインタビューが収録されています。9条はマッカーサーが提案したとされていますが、じつは水面下で幣原元首相の働きかけがあったという話が書かれています。

日本は大国の脅威にさらされ、軍拡、戦争へと突き進んでいったわけですが、その果てに起きたのは、原子爆弾という究極の兵器の洗礼。敗戦国の人間として何を思い、マッカーサーにどんな進言をしたかを知り、「ああ、戦争放棄にはそういう気持ちを込めていたのか」「この思いを引き継ぎ、後世に語り継がなくては」と強く感じました。学生にも読みやすいので、講演会で大学に行ったときには、この本をすすめているんです。

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『鬼畜』

監督:野村芳太郎
1978年・日本
原作は松本清張の小説で、幼児を虐待する女の狂気を描いた問題作。「小学生のとき、テレビで放映されたのを見て衝撃を受けた作品。実際にあった事件がもとになっていると知りました。映画やドラマを見て泣いたのはこれが初めてです」

望月衣塑子(もちづき・いそこ)
東京新聞社会部 記者
1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、東京・中日新聞社に入社。経済部を経て社会部の遊軍記者となる。森友学園・加計学園問題では菅内閣官房長官への鋭い質問が注目される。近著は『新聞記者』。2児の母。

構成=中津川詔子 撮影=吉澤健太