「収入は減りましたが、会社員に戻りたいとは思いません」

とはいえ、退職後のプランはすでにあった。中田さんが開いた落語会は毎回大盛況で、「これは仕事になりそう」とひそかに考えていたのだ。もともと料理が得意で、「落語も聞ける料理屋を開けば食べていけるのでは……」。

しかし、いざ開業してみると苦労の連続。「知人の店で3カ月間修業もしましたが、1人で何十人分もの料理を仕込むなんて初めてで。当初は余裕がなくて、集客どころではなかったです」

落語会がない日は1人も客が来ず、「今日は掃除だけでいいよ」とアルバイトに帰ってもらったこともある。収入が少なくても、固定費は月に数十万円かかる。出費を抑えるために、掃除や落語会のチラシ手配、ブログの更新など、すべて自分でこなした。定休日には寄席に行き、出待ちをして落語家に出演交渉。プライベートはほとんどなく、1年ちょっとで3kg痩せた。以前よりは余裕が出てきた今も、相変わらずフル稼働だ。それでも、会社員時代より断然ストレスは少ないという。

「合わない人と無理につきあう必要がないですから。客商売ですが、ヘンな人は無理につなぎ留めなくてもいいやって思ってます」

目下のご褒美は、出演してくれた落語家に「おかげさまで、やりやすかったよ」と言われること。

「収入は減りましたが、会社員に戻りたいとは思いません。頑張って店を大きくします!」

23歳:念願の部署だが夜通しの撮影にヘトヘト
29歳:助監督として芽が出ず悩む
31歳:深夜ドラマで地上波初演出
32歳:勝手がわからずパニックに。非常階段で泣く日々
34歳:落語家という生き物が好きになる
35歳:ひたすらCM料金の計算をする日々
37歳:小料理屋「やきもち」を開店

撮影=伊藤菜々子