やりたいことを実現するには、周囲の人々を味方につけることが大事です。この連載では、研修・講演依頼があとをたたないスピーチコンサルタントの矢野香さんに、他者に好印象をもってもらうスキルについて聞いていきます。

リーダーとして相手の話を引き出すには?

「口は1つで耳は2つだから、聞くときは話すときの2倍聞かないといけない」とあるように、自分の話ばかりでなく、相手の話もしっかりと聞ける人が、コミュニケーション上手といわれます。

話を聞くときは、「うなずく」「メモをとる」といった方法もありますが、これは初めてその話を聞く場合。私が以前担当していたアナウンサーという役割は、すでに記者が取材をした後を引き継ぐので、初めての話を興味をもって聞くというよりは、相手の中にあるまだ形にはなっていないモヤモヤとした言いたいことを引き出すことが重要になります。これはリーダーにとっても必要なスキルですね。

今回はこうした、相手の言いたいことを整理したり、まとめたりして、リーダーとしてうまく会話を続けていくコツをご紹介します。

文末に「ね」「よ」をつけて相手にバトンを渡す

ポイントは3つあります。1つ目は文末の工夫です。たとえば「ここがポイントです」と言いたいとき、「ここがポイントですね」あるいは「ここがポイントですよ」と、会話の最後に「ね」や「よ」をつけると女性らしさが出ます。同時に「ね」や「よ」は、会話の橋渡しの役割も果たします。まだ自分の意見を言い終わっていないときは「ね」や「よ」をつけません。そろそろ終わりに近づいて、あなたの意見を聞くよ、話を振るよ、というときに「ね」や「よ」をつけます。「ね」や「よ」が相手に渡すバトンになるのです。

以前、大みそかのテレビ番組でこんな光景を目にしました。日付が変わるまであと30秒。男性のアナウンサーが女性のアナウンサーに「さあ、いよいよですね」と振りました。それを受けて、女性アナウンサーは「そうですね、期待が高まりますね」と返しました。それに対して男性が「ねえ」、そしてまた女性が「ねっ」と、そこから「ね」の応酬。それで0時になる1秒前まで時間をもたせたのです。

さすがなのは「ねっ」や「ねぇ」など、「ね」のバリエーションがいろいろあったこと。「ね」という1音だけでも十分に会話が成立するのだと、そのテレビ番組でしみじみ感じました。文末の「ね」と単体の「ね」、いずれも「あなたはそう思いませんか?」という英語の“don't you?”の意味合いを含んでいます。ですから、自分で意識して「ね」をつけるところとつけないところを分けましょう。これが1つ目のポイントです。

2つ目のポイントは、この「ね」と言うときに相手に向かって自分の手を出すこと。「○○さんもそうですよね」と、意見を聞きたいときは、相手側に手のひらを見せます。もっとやわらかくしたいときは「○○ですよねぇ」と手の甲をひっくり返してから、手のひらを見せる。

「ね」と手のひら見せのダブル使いをすると、いかにも「はい、私の番は終わりました。次に、あなたの考えは?」という感じで相手に話を振ることができます。「ね」を文末につけるのが、言語表現(Verbal)だとすると、手をつけるのは非言語表現(Nonverbal)なのです。