▼ご紹介いただいた本6冊

『知ろうとすること。』早野龍五、糸井重里(著)新潮社 本体430円+税
東日本大震災の原発事故直後、事実を分析し、ツイッターで発信し続けた物理学者に、コピーライターの糸井重里が取材。「偉い人の話でもむやみに信じることなく、データやファクトをベースにして、自分で考えて納得することが大切。薄い本なので、読みやすいと思います」

『宇宙からいかにヒトは生まれたか』更科 功(著)新潮社 本体1300円+税
宇宙から地球が生まれ、人間が生まれた、その138億年の歴史を紹介。「普段は身近な問題に心を奪われがちですが、地球と動植物の関係を整理してみると、人間が存在する時代など一瞬にすぎないと、謙虚な気持ちになります。難しいところは飛ばして読んでもいい」

『トップエコノミストの経済サキ読み術』上野泰也(著)日本経済新聞出版社 本体1600円+税
経済の仕組みをAKB48や東京五輪など身近な題材を織り交ぜて解説。「経済をこれだけわかりやすく説明した人はあまりいない。辞書のように興味のあるところから読めます。さらに専門的に読みたい方には、池尾和人『連続講義・デフレと経済政策』(日経BP社)もお薦めです」

『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす』日本財団子どもの貧困対策チーム(著)文藝春秋 本体780円+税
日本の子どもの6人に1人が貧困家庭で、これを放置すると社会的損失は年間40兆円。データ分析やインタビューを交え、現状に迫る。「日本の現状に閉塞(へいそく)感を抱いたり、このままでいいのだろうかと思っている人に。社会問題に目を向ける入門書として最適な本です」

『すべての見えない光』アンソニー・ドーア(著)藤井 光(訳)新潮社 本体2700円+税
第2次世界大戦中、フランスの盲目の少女と、孤児院で育った少年ドイツ兵の出会いを描いた長編小説。「分厚い本ですが、短編作家の本なので、ひとつひとつの章が短くて読みやすい本です。透き通るようなきれいな文章ですから、心に栄養を与えるのにぴったりです」

『みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記』星野博美(著)文藝春秋 本体1950円+税
1549年にザビエルが鹿児島に上陸し、キリスト教の布教が始まる。禁教令が敷かれ、日本のキリシタンが日本人から迫害を受けた歴史をたどる。「ISの暴虐を恐ろしく思いますが、日本にも凄惨な宗教問題があったことがわかる。日本の歴史にここから触れてほしい」

出口治明
ライフネット生命保険会長。1948年、三重県生まれ。72年に京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社に入社、ロンドン現地法人社長や国際業務部長などを経て2006年に退職。戦後初の独立系生保会社として同社を設立、13年より現職。経営者目線と博識から生み出される著作にファンは多い。
 
●出口さんの本
1200都市以上を訪れ、5000冊以上の歴史書を読破。“人の話を聴き本を読み旅をして自分で咀嚼して腹落ちしたこと”をまとめた『仕事に効く教養としての「世界史」』(祥伝社)がベストセラーに。昨年10月に2巻を出版。近著に『世界一子どもを育てやすい国にしよう』(ウェッジ)。
 

構成&編集=干川美奈子 撮影=堀 隆弘