テレビの仕事を徐々にやり始め、「ネガティブタレント」と呼ばれて忙しくなった時期がありましたが、母は「こういう忙しいときだからこそ、ダンスとか何か別のことを身につけたほうがいい。そういう努力をすることで、今後の仕事も変わってくるし、何かをやり続けておけば2、3年後には新たな挑戦へと結びつく」とアドバイスしてくれました。頭ではわかっていても、僕は目の前の仕事でいっぱい、いっぱい。自分を鍛える、磨く努力を怠ったまま3年が経ってしまって……。

当たり前のことですが、テレビに出始めた頃に比べたら、仕事に波を感じるようになり、母の忠告を実感しました。母と僕は、これまでの人生、この繰り返しで来ているように思います。自分の本を出版するにあたり、母が書いた文章を読み、改めて自分の愚かさを実感しました。「あー、僕はなぜ母の言うとおりに行動しなかったのだろうか……」と。僕の人生を、すべて先読みしているように見える母の存在は、やはり偉大です。

僕は自称フェミニスト。女性は強くて怖い生き物で、男はバカな生き物だと思っています(笑)。家庭にしろ仕事にしろ、女性が男の事情を察して我慢しているからこそ、世の中は成立しているんですよ。僕は働く女性がもっと増えてほしいと願います。そういう女性が増えることによって、男性側にも、より女性に対するありがたみや感謝の気持ちが生まれると思うから。

(左)東京の公園で(右上)『ファインディング・ニモ』は衝撃を与えてくれた作品で、初めて自分から感想を伝えた/母が好きだったバンドのCD(右下)「パワーパフガールズ」「サウスパーク」など、類さんの情緒を育むため、母が見せたアニメやバラエティー番組のビデオ
栗原 類
モデル・タレント。1994年、東京都出身。英国人の父と日本人の母との間に生まれる。8歳のときN.Y.で「発達障害」とわかる。11歳で帰国。中学時代にメンズファッション誌でモデルデビュー。17歳で「ネガティブタレント」としてブレイク。パリコレのショーモデルなどを経て、現在は役者としても活躍中。2016年10月に著書『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』(KADOKAWA)を発表。自らの障害を赤裸々に語る。

構成=蓮池由美子 撮影=国府田利光