しかし、立場や状況が変われば、また新たな悩みに直面する。40代半ばになった頃、今度は『7つの習慣』との出合いが、大きな糧となったと関根さんは言う。

多くの経営者に心の指標を与えてきた、あまりにも有名なこの一冊を、関根さんはどう読んだのか?

「社内での人間関係、家庭における悩みというのは、人が生きていくうえで何度となく発生するものだと思います。そこで必要になる思考やスタンスが、ロジカルに整理されていたのが、管理職研修で紹介された『7つの習慣』でした。この本に書かれているのは、ビジネスで成功を収めるためのメソッドではなく、人が人から信頼を得るために必要なヒントです。つまり、ビジネス書ではなく、人格や人間力を磨くための一冊と受け取るべきでしょう」

実際、一読してすぐ、天啓を受けたような衝撃とともに、視界がクリアに開けるのを感じたという。

「特に印象深いのはインサイドアウトという考え方。人の心を変えることはできなくても、自分が変わることで人にいい影響を与えることは可能なはず。これは、今日まで私自身も、講演などで常々お伝えしてきたことなんです」

この『7つの習慣』をバイブルに、やがて社員から経営側へと立場を変えた関根さん。役員になったのと同時期に、知人が発行する「致知」という人間学の探究をテーマとする月刊誌に出合った。同誌で取り上げられた箴言(しんげん)の数々がまとめられているのが、3冊目の『小さな人生論』だ。

「言葉は人をつくるもの。そして、言葉は自らの内面にある思考によって紡がれるもの。このサイクルを教えられたことで、今まで自分が信じてきたものが間違っていなかったのだと、ひとつの自信にもなりました」

何より、こうした琴線に触れる本との出合いもまた、貴重な財産だ。