ポイントはこの制度改正が、介護士の給料にどんな影響を与えるかだ。
介護業界は他職種に比べ賃金が低めであることなどから、若い世代の定着率が低い。そのため、高齢者や時間に余裕のある主婦が手軽に資格を取って介護の仕事に就きやすいようにして、人手不足を補う狙いがあるというが、それはかえって逆効果ではないか。ハードルを下げすぎると介護スタッフの平均賃金がむしろ引き下がるからだ。
また、これとは別に政府は、介護福祉士の資格を得た外国人が日本にとどまって働けるよう在留資格を与える法改正を検討中だが、これも言葉のハンディが大きい日本の介護市場が外国人にとって魅力的かどうかだ。問題文にルビをふったとはいえ、難解な国家試験も待ち受ける。
ちなみに日本が手本にしたドイツの介護保険制度では、家族介護にも一定の手当が支払われる。さらに専門の介護士の給与も地域差を反映してもう少し柔軟な価格制度になっている。
これに対して、わが国の介護報酬は最大でも20%の上乗せしかなく、きめ細かに対応していない。たとえば現行の「地域別最低賃金」を見ると、最高額の東京都は907円で最低額の鳥取県・高知県・宮崎県・沖縄県の693円と比較すると、実に約1.31倍も差が生じている。そのため、特に大都市圏では他の産業と競争できず、人材確保が困難になり、離職率を高める要因にもなっている。
これを抜本的に是正するためには、介護報酬算定の基礎を「地域別最低賃金」に改正し、早期に環境改善を図る必要がある。
さらに民間の資金を活かす改革も必要だ。現に個人保険の保有契約高は857兆円にのぼる。また、国民の金融資産は1700兆円を超え、そのうちの6割は60歳以上が保有している。国は貧しいが、一部の高齢者はお金持ちだ。
Yooco Tanimoto=イラスト