高齢化が進む日本の限界集落が元気になる方法はあるのか。広島県のある島では、地元で生まれ育った女性と移住者が協力し、島で栽培しているレモンやミカンを使ったマーマレードのブランド化に成功した。ジャーナリストの牧野洋さんがリポートする――。

高齢者だらけの島、これからどうする?

瀬戸内海に浮かぶ大崎下島。行政上は工業都市の広島県呉市に属するものの、歴史的には柑橘かんきつ栽培を柱とする農業地帯として栄えてきた。

本州とは「安芸灘とびしま海道」でつながっている大崎下島
撮影=プレジデントオンライン編集部
本州とは「安芸灘とびしま海道」でつながっている大崎下島。港町の御手洗地区には歴史を感じる町並みが残っている

今は違う。65歳以上の人口の割合を示す高齢化比率が7割に達しており、高齢化スピードで日本の中でも際立つ。人口1700人のうち65歳未満は500人余りにすぎないということだ。

島全体が限界集落となって衰退していくしかないのか。どうにかしてコミュニティーを維持していく方法はないのか。

「ルーラル起業家」は88歳の今も現役

現状打開のヒントを与えてくれる女性がいる。大崎下島で生まれ育った上神うえがみアツカさんだ。

柑橘農家であり、事業家でもあるアツカさん
撮影=プレジデントオンライン編集部
柑橘農家であり、事業家でもあるアツカさん

88歳でありながら、現役の柑橘農家であると同時に、高級マーマレードの製造販売を手掛けるルーラル(田舎)起業家でもある。島外から若い人材を呼び込む触媒にもなっている。

笑顔を絶やさず、きびきびと動く。米寿を迎えているとはとても見えない。日光が降り注ぐ斜面地の農園に日常的に足を運び、体を動かすことで健康を維持しているのだろう。