六本木ヒルズのGoogle本社内にオープンしたばかりのGoogle Partner Plex Tokyo。このプロジェクトを統括するのが同社執行役員の仲條亮子さんだ。テレビの世界からネットの世界へ。華やかな経歴とは裏腹に実は努力の人である彼女が、メディアを志したきっかけとは……?
Google執行役員である仲條亮子さんの経歴はとても華やかだ。早稲田大学政治経済学部卒業、シカゴ大学でMBA、ハーバードビジネススクールでは数多くの経営者を生み出したアドバンスト・マネジメント・プログラムを修了。ブルームバーグ情報テレビジョンで社長、ブルームバーグ本体でも日本市場における戦略策定責任者や在日副代表を務めた。現在はキリン株式会社の社外取締役でもある。
ただ、きらびやかな履歴書に目を奪われると、仲條さんの人柄は見えてこない。Googleの同僚は仲條さんを「地道な努力の人」と見る。キャリアの節目に一流の人が集まる場で学んだ理由を「不安だったから、それを解消し、自分に大丈夫と言ってあげるため」と説明する。
常に目の前の仕事に精一杯取り組み、自分の技量に不足がないか謙虚に見つめる。足りないところがあれば、どんなに忙しくても学ぶ時間を確保する。
メディアを志したきっかけは「田舎で育ったから」
ブルームバーグとGoogleの共通点はメディア企業であること。メディアで働くことを志したきっかけは「田舎で育ったこと」だという。出身は千葉県東部の小さな町だ。
「町に出ても情報はさほどありません。新聞は読んでいましたが、当時、雑誌は子どもが簡単に手に入れられるものではなかったので、少女時代の私の情報源はテレビでした。だから、自分もテレビ局で働いたら、見ている人に的確な情報を届けられるのではないかと考えたのです」
大人になってからも、発想の根本は変わらなかった。
「情報は国民のもの。色々な意思決定をする時、正しい情報があるのとないのとでは全然違います。ずっと、情報に携わる仕事をしたい、と考えてきました。ブルームバーグでは、優れた日本企業の情報を海外投資家の方々に知っていただくことに意義を感じていました。今は、個人が発信力を持つようになっています。例えば携帯電話のようなデジタル機器の中で、情報と人が一番動いている。ご縁もあり、今、自分がGoogleにいることに意味があると思っています」
小さな町に住む女の子が世界に飛び出したきっかけは、1冊の本だった。『ハロー・フロムアメリカ』(集英社コバルト文庫)。「女子高生の遊学記」という副題がついており、著者はアメリカの高校に留学した日本の女子高生だった。
「この本を100回以上読んだと思います。本に書かれている光景を想像して『私がここにいたら、こんなことをして…』と想像と憧れを膨らませていました」