「真面目で謙虚」は「自信がなさそう」に見える

一方で、真面目さと謙虚さから出る癖を注意されたこともある。Google入社から約3カ月経ったある日のこと。同僚のドイツ人執行役員から「その言葉を使わないようにした方がいい」と言われた。当時、仲條さんは「今はまだ勉強中ですが」といった表現をよく使っていたのだ。

日本社会では、こうした表現は「控えめな人」と好印象を与えるかもしれない。でも、仲條さんの同僚は「周囲は君の言葉を額面通りに受け止めるかもしれないから、やめなさい」と言った。

「入社してまだ間もなかったこともあったし、『ここは日本だし自分は女性だから、自信過剰に見えないほうがいい』という思いもあって、そういう表現を使っていた。今も直そうと努力していますが、一度覚えた“型”をアンラーン(unlearn)するのは難しいことです。これは失敗というより、学びの経験ですね」

新プロジェクト、Google Patner Plex Tokyo

2015年12月から、新しいプロジェクトの責任者になった。「Google Partner Plex Tokyo」と呼ばれる空間を統括する役目だ。ここでは、テクノロジー、消費者行動、ブランド、新しい働き方やイノベーションを起こすための企業文化に関するインサイトを共有し、国内外のクライアントと共に革新的なビジョンや戦略策定をする。

「Googleはすごくスピードの速い会社というイメージを持たれていると思います。でも、一番速いのは実はユーザーの方々で、多くの企業はそれに追いつくために必死になっています。そして、企業の意思決定は今でも会議室で行われている。

そうではなくて、ユーザーが身を置いている環境に近いところで考えてみよう、という発想が、Partner Plexの根底にあります。こちらにお越しいただいてクライアントの方とお話すると、今までにない議論が生まれるんです。

最初は『ちょっと珍しいキュレーションの場なのかな』という感覚でいらっしゃる方も、1時間の予定が気が付くと3時間議論していたりする。私たちもお客様のビジネスや課題をよく理解した上で臨むことができれば、非常に深い議論ができることが分かってきました」

3年にわたり、仕事の20%をこのプロジェクトの構想・立ち上げに充ててきた。2児の母である仲條さんは「このプロジェクトが私の第三子。ちょうど今、よちよち歩きの赤ちゃんです」と言う。

 
Google Partner Plex Tokyoは、東京・六本木のGoogle本社内に2015年12月にオープンしたばかりの新しい施設。全く雰囲気の異なるエリアが連なる、六本木ヒルズの中とは思えないような空間だ。非日常&日常の空間に身を置くことで、テクノロジーでどう企業がビジネス変革を起こすかについて活発に話し合えるような仕掛けが施されている。